特集

社会情報学部
文理を「つなぐ」学びで
新しい価値創造に挑戦

社会情報学部「文理融合」の学びが育む、新たな発想と実践力

大きな変革の時代、学生の知的好奇心は、これまでの「文系」「理系」の枠組みを超えて大きく広がっています。その広がりを受け止めるのが、社会情報学部が掲げる「文理融合」の学び。独自のカリキュラムで、学生の新たな「発想力」や「実践力」を培います。今回は、社会情報学部で学ぶ学生たちのリアルな声を通じて、具体的な学びの内容と学部の魅力をご紹介します。

学びの特色とカリキュラム

社会情報学部の最大の特色は「異なる分野をつなぐ学び」です。「文系・理系」の融合、「人間・社会・情報」という学問領域の融合を通じて、これまでにない新たな価値を創造します。充実した学びを実現するのが、基礎力育成と異分野融合の2点に重点を置いた独自のカリキュラムです。1年次では英語、数学、コンピューターを学ぶ「基礎科目」、3領域の概要を学ぶ「コア科目」で基礎力を養います。2年次以降は学際領域の「リエゾン科目」、専門分野の「エリア科目」などを通じ、専門性を高めます。そして3年次以降では、3つの学問領域から2つを選択し、「社会・情報」「社会・人間」「人間・情報」の3コースに分かれてさらに専門性の高い融合領域を学びます。

「人間・社会・情報」という学問領域の融合を通じて、新たな価値を創造

学生鼎談「幅広い学びから広がる、無限の可能性」

学び続ける中、将来の方向性が見つかった
社会情報学部 社会情報学科 4年
塩崎 紘生
選択したコース
手を伸ばせば伸ばすほどにつかめた「面白いもの」たち
社会情報学部 社会情報学科 4年
古田 杏菜
選択したコース
学びの充実度は期待以上。何でも挑戦できる素敵な環境
社会情報学部 社会情報学科 4年
吉山 琳子
選択したコース

■学生の個性と可能性を引き出す「文理融合」の学び

――社会情報学部を選んだ理由を教えてください。

古田 私は高校時代、将来のビジョンがはっきりとは見えていませんでした。そこで社会情報学部を知り「ここでなら、幅広く学べて未来の選択肢を増やせるのでは」と可能性を感じて進学を決めました。

塩崎 私も自分の適性を把握しきれていなかったので、文系・理系の両方を学べる点に魅力を感じました。また私は北海道出身なのですが、高校時代の恩師が本学の卒業生で、「若いうちに新しい環境に飛び込んでみては」と勧めてくださったことも大学選びに大きく影響しています。

吉山 私はもともと心理学とプログラミングのどちらにも関心があり、志望学部を絞り切れずにいました。ですが、社会情報学部では、どちらも実際に学んでみてから専門分野を選べることを知り、それが進学の決め手になりました。

――本学部での印象的な学びについて教えてください。

古田 もっとも印象に残っているのは南部和香先生の「計量経済学」の授業です。この授業を履修するまで「データ分析」については何の知識もなかったのですが、自分の興味に基づいて楽しみながら学べたことで「自分で仮説を立て、データを集め、分析して結果を出す」という分析の面白さを実感できました。同様にインパクトが大きかった授業は、宮治裕先生の「インフラ構築演習」です。さまざまな機材を使って自分で実際にネットワークを構築する経験ができ、達成感がありました。
※現在の授業名は「インフラ構築演習/ネットワーク構築演習

吉山 「計量経済学」の授業に関して、具体的にはどのように作業を進めていくのですか。

古田 例えば自分で「人口増加が犯罪率の上昇に影響しているのではないか」といった仮説を立てたとします。その場合は、まず人口推移のデータと犯罪件数のデータを集め、それからその2つを組み合わせて分析します。「分析」と言うと難しそうですが、実際は自分が実証したいことに即したデータを探し、大量に集めてくる作業に一番労力を要します。

塩崎 私は飯島泰裕先生の「プロジェクト演習入門」という授業が印象的でした。実践的な授業を通じて、実社会で直面する「答えのない課題」を解決するために必要なコミュニケーションを学ぶことができました。3年次以降はSA(スチューデントアシスタント)として、授業の運営に参加できたことで、学びへの理解がさらに深まりました。また「J-BINGO」という国際的なプログラムでは国際機関でのインターンシップに参加したり、留学生の方と触れ合ったりする機会も多く、海外への視野が開けました。

吉山 私は苅宿俊文先生の「ワークショップデザイン」の授業から大きな気付きを得ました。授業では、創作ダンスや演劇、映像制作といったさまざまなワークを通じ、他者と関わりながら自己理解を深めていきます。私が入学した時期は、新型コロナウイルス感染症の影響で対面型コミュニケーションが制限され、私もやや消極的になっていました。ですが、この授業をきっかけに一気にコミュニティが生まれました。私は社会情報学部に入ってから、入学時の希望通り心理学もプログラミングも学びましたが、こうした幅広い学びに触れていく中で「私はコミュニティ形成に興味があるんだな」と気付くことができました。

塩崎 私も昨年「ワークショップデザイン」の授業を履修したのですが、なかなか直接お目にかかれないような社会で活躍される著名な方や文化人の方が講義してくださることに驚きました。また、ワークを通じて自分を客観視できるようになるので、就職活動での自己アピールでも役立ちました。

塩崎さんがSAを務めた「プロジェクト演習入門」の授業

――現在の研究内容について教えてください。

古田 私は、経済学を専門とされる長橋透先生のゼミナール(ゼミ)で「日本における大豆ミートの普及戦略」をテーマに研究を進めています。このテーマを選んだ理由は、世界の飢餓問題に対する危機感があったからです。今、飢餓人口は8億人以上と言われています。大豆ミートをはじめとする代替肉は飢餓問題の解決策のひとつになり得るとされていますが、日本ではまだなじみが薄く、スーパーマーケットに代替肉が置いてあっても手に取る人は少ないのではないでしょうか。研究のステップとして、まずはSDGsの視点も含めた飢餓問題そのものについて理解を深めます。次に「テキストマイニング」という分析手法を用いて「日本人が代替肉に持っている印象」を調べたいと思います。その結果を基に「どうすれば、もっと代替肉を普及できるか」を考察する予定です。

塩崎 私は飯島先生のゼミで「相模原市民のシビックプライド向上」を目的とした研究を進めています。シビックプライドとは「地域への誇りと愛着」を表す言葉で、住民の定着率とも関連性が高いとされています。地域の魅力と言うと、特産品や観光地がクローズアップされがちですが、ベッドタウンとして人気の高い相模原市では、地域の個性を生かした独自の取り組みが考えられるのではないか、という視点から研究しています。研究はグループで進めており、取り組みの一環として、イベント参加もしています。先日は「大野北銀河まつり」という相模原市のお祭りにブース出展し、相模原市をテーマにしたクイズなどを子どもたちに楽しんでもらうことができました。相模原市役所の地域振興課とも連携し、取り組みを進めています。

「日本における大豆ミートの普及戦略」を発表する古田さん

吉山 「ワークショップデザイン」の授業で「コミュニティ形成」というテーマに魅力を感じ、香川秀太先生のゼミに入りました。現在は相模原市からの依頼を受け「銀河の森プレイパーク」という冒険遊び場の実態調査をしています。インタビューやアンケート、フィールドワークなどを通じて利用者の声を収集し、パークをより良い場所とするための施策を提案するのが目的です。12月には「銀森祭」という青学とパークのコラボイベントを実施し、鬼ごっこや巨大かるた企画などで子どもたちと遊びました。子どもたちの声も研究に反映されます。相模原市を研究対象にしている点で、塩崎さんの研究との共通点を認識するとともに、私の研究にも「シビックプライド」という視点を取り入れてみたいと思いました。

古田 フィールドワークは魅力的ですね。私も関心があるのですがこれまで具体的な行動イメージがつかめませんでした。今回、お二人から実例を伺えて勉強になりました。

ゼミのイベントで子どもたちと一緒に作成した巨大かるた(左から2番目下:吉山さん)

■「つなぐ」学びが未来を広げる

――卒業後の進路について教えてください。

古田 私は、IT企業でネットワーク関連のSE(システムエンジニア)として働く予定です。就職活動の最中は、自分の研究と職種との関連性はあまり意識していませんでした。ですが、改めて考えてみると、研究で身に付けたデータ分析のスキルや発想は、SEとして顧客に提案を行う際などに生きてくるのではと思います。

塩崎 将来、独立開業や起業も視野に入れ、働きながら公認会計士を目指そうと考えています。社会情報学部では、ゼミや授業での交流を通じて多様な価値観に触れることで新しい視点を得ることができました。さらにJ-BINGOでは、海外の公認会計士資格を持っている方からお話を伺ったりと、さまざまな経験ができました。その結果「自分も若いうちにいろいろ挑戦して、より自分らしい人生を歩もう」という気持ちが生まれてきました。青学の社会情報学部に進んでいなければ、こうした成長はなかったと思います。

吉山 私は本学部で幅広く学ぶうち、生活や産業を広く支えるような業界を希望するようになりました。商社や鉄鋼業界なども検討しましたが、最終的にはITの発展を支える「半導体」に引かれ、半導体業界に就職を決めました。学部の学びの中でITが身近になっていたことも影響があったと思います。実は就職活動の中で、古田さんのようにSEを検討したこともありました。入学当初、自分の就職先として予想もしていなかったSEに着目するとは自分でも意外でしたが、文理の垣根を越えて学んだことで、職業選択の幅が大きく広がった証と感じています。

■ 学生から見た「社会情報学部の魅力」

――今回の鼎談で、学部や自分の学びについての新たな発見はありましたか。

古田 社会情報学部では「自ら手を伸ばせば伸ばすほど、面白いものが出てくる」と実感しました。私はもともと「幅広く学べる学部」というイメージを持っていましたが、今回の座談会を通じて今までのイメージがさらに強化されました。

塩崎 私も、本学部の学びの領域の幅の広さを改めて感じました。そして、今回の3人の研究テーマはそれぞれ全く異なるものでありながらも、お話を聞くうちに自分の研究と通じる部分も発見できました。例えば古田さんが研究テーマを「代替肉」から「シビックプライド」に置き換えて探究を進めていけば、そのまま相模原市に提案できるかもしれません。また吉山さんの「プレイパークの実態調査」については、自分が「大野北銀河まつり」にブース出展した時の経験と重なるものを感じました。自分の研究と全く違うようでいて、重なる要素もあるお二人の研究を知り、まさに本学部が掲げる「他分野と融合する学び」を実感しました。

吉山 私はこれまで他のゼミの話を耳にしても、漠然と「難しそうな研究をしているんだな」と思う程度で、それ以上踏み込む機会はありませんでした。ですが、今回お二人から代替肉やシビックプライドの話を聞いたことで、自分にも身近なことがテーマになっていると知り、とても面白いと感じました。また、本学部で得られたものは期待以上でした。プレイパークの実態調査という「文系」の研究にも「理系」のデータ分析の知識が役立ちましたし、就職先を含めた将来の選択肢も大きく広がったからです。

――社会情報学部とはどういう場でしょうか。改めて学部の魅力を教えてください。

古田 一言で言うと「いろんな人がいろんな方向に突き進んでいけるような学部」です。

塩崎 「何かを学びたい、でも自分に最適な分野が分からない」という人にお勧めです。社会情報学部では幅広く学べて、多くの出会いもありました。学びながら進路を決めていくことができる「すごい学部」だと思います。

吉山 いろいろなことに興味がある人や、何を学ぶか少しでも迷っている人は、ここに来ればなんでもできると思います。「自分の可能性が、本当に幅広く広がる学部」だと思います。

*本学部パンフレットには、個別インタビューが掲載されています。

鼎談後記:青学の社会情報学部とは?

社会情報学部長 宮川 裕之

社会情報学部は文理融合の教育研究を特徴する学部として生まれて15年が経ちました。在籍者の入試方式でみると、文系入試約7割、理系入試約3割で、ちょうど、高校での文系コースと理系コースの人数比に一致しています。文系指向か理系指向かを問わず、初年時の必修科目には、英語、統計学、プログラミング、社会科学関連科目、人間科学関連科目、情報科学関連科目が含まれます。文系入試で入学してきた学生向けの数理系科目の配置や学習支援を目的とした各領域の質問部屋の運営をはじめ、文理融合の学びを支援するための貴重な経験「知」が、この15年の間、学部に蓄積されてきました。3年次以降は社会・人間・情報の各領域の組み合わせで構成される3つのコースに配属され、学びの多様性と専門性のバランスをとる工夫もしています。社会情報学部の教育課程運営のポイントは、言うまでもなく文系で入学した学生への理系教育、理系で入学した学生への文系教育をいかに設計して実践するかにあるわけですが、「言うは易し行うは難し」というのが15年間の率直な実感です。ただ、今回の学生鼎談を聞かせてもらい、本学部のコンセプトが学生自身の言葉で表されていることに学部の研究教育に関わる全ての教員、職員にとっては何よりの喜びではなかったかと思います。

新たな価値創造を支える授業

■ プロジェクト演習入門

企業や行政が抱える課題の本質を整理し、
その解決策を模索

企業や行政が抱える課題を、少人数グループで取り組む授業です。学生は課題の本質を整理した後、その解決策を模索します。外部への自主的な調査や情報収集など授業時間外の活動も必要となり、授業は進捗報告や課題解決に不可欠な知識・技術の勉強が中心です。報告会では独創的な解決案が求められ、課題を提示した外部の審査員が評価を行います。答えのない問題に解決策を生み出し、グループワークや協働の重要性、さらにサーバント・リーダー シップを実感します。

■ 計量経済学

データと統計的手法を用い、
社会経済の仕組みや関係性を解明

計量経済学は、経済理論を基にして社会を経済モデルとして表現し、データと統計的手法を用いて社会経済の仕組みや関係性を明らかにする学問です。例えば、所得と消費のデータを利用して推定することで、所得の増加がどれくらい消費に影響を与えるかを数値で示すことができます。データ分析手法を習得することは、卒業研究などでの客観的な分析に役立つだけでなく、就職後も活用できる力となります。

■ インフラ構築演習/ネットワーク構築演習

実際のサーバーやネットワークなどを
設定・構築し、経験値を高める

以前はネットワークやサーバーの構築業者や管理者にITインフラの構築運用技術が必要とされていましたが、現在はクラウドの普及や仮想化技術の進展によってシステム開発者であってもその知識が必要とされます。本授業は、既に学習した座学によるネットワークの基礎を、実践的に実際のサーバー・機器類・ネットワークを設定・構築する体験によって定着させます。この実践経験は、クラウドや仮想化の設定の際にも基本となり活用可能です。

ゼミ インタビュー(AGU LiFE)

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。