特集

総合文化政策学部
コラボ企画が学内外で話題に!
「フェアトレード・ラボ」

企業コラボを通じ「仕事の現場」を体感

地域のコミュニティや企業、官公庁といった外部の「プロ」と連携して活動する「ラボ・アトリエ実習」は、総合文化政策学部独自の取り組みです。今回は、学生を主体にフェアトレードやSDGs啓発を推進している「フェアトレード・ラボ」の活動をご紹介します。

「フェアトレード」とは?

フェアトレードとは、発展途上国で作られた商品を適正な価格で継続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みです。また自然環境保護の観点からも大きなメリットが期待されています。フェアトレード運動のはじまりはアメリカのキリスト教会によるものといわれており、同じくキリスト教信仰にもとづく教育を「建学の精神」とする本学は深く共鳴し「青山学院大学フェアトレード憲章」を策定。学内外において積極的にフェアトレードの啓発活動を行ってきました。こうした取り組みが認められ、2021年には日本フェアトレード・フォーラムによって「フェアトレード大学」に認定されました。

【学生による授業紹介MOVIE】総合文化政策学部

フェアトレード・ラボを中心に、学生が同学部を紹介しています。

ラボ長インタビュー

学生が主体となって活動を進めるフェアトレード・ラボ。その運営の中心となるのが、学生代表であるラボ長を含めた「役員班」メンバーです。1年間ラボ長を務めた神明さんに、フェアトレード・ラボ全体の活動や今期の振り返りについて伺いました。

■ ラボ長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
神明 和希
ラボ生自らが考え、実行する
フェアトレード・ラボの取り組み

【年間活動は「班単位」と「ラボ全体」の2種類】

フェアトレード・ラボでは、企業や地域のコミュニティ等とのコラボレーション(コラボ)を中心に、インターンシップ形式でフェアトレードの啓発活動を行っています。「学生主体」の活動が大きな特長で、年間の授業計画からコラボ先の企業との交渉まで、多くの部分を学生自身で話し合って決めていきます。プロジェクトは基本的に班ごとに進められますが、年に数回、ラボ全体での取り組みも行います。5月にはNPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンが開催した「POP-UPショップ」への参加、6月と12月には学内にて「フェアトレード・ウィーク」というイベントを行いました。「POP-UPショップ」は、本ラボとフェアトレード・ラベル・ジャパン、さらにサステナブル事業を手掛ける企業の株式会社Innovation Designによる産学連携イベントで、渋谷スクランブルスクエアにおいて開催されました。「私たちの2050年とフェアトレード」と題したショップでは、ラボ生がセレクトしたフェアトレード商品を販売し、2,000人を超える方が来場してくださいました。「フェアトレード・ウィーク」は毎年学内において、前期と後期に実施しているイベントで、各班が足並みをそろえて同時に活動を展開することで、インパクトあるフェアトレード訴求を行いました。


【フェアトレード・ラボ全体も自分自身も成長できた一年】

ラボ長としての1年は多忙を極めたものでしたが、活動を通じてラボ全体を俯瞰して見る目が育ったように感じています。フェアトレードについてもより「自分ごと」として考えられるようになり、コーヒーを飲むときでも「こうした自分たちの消費行動が社会の動きに直結しているんだな」と実感するようになりました。この1年間、フェアトレード・ラボは「自分たちと同じZ世代から環境意識の輪を広げていこう」という目標を掲げてきました。数々の活動を通じ、ある程度はその目標に近づけたように思います。

班長インタビュー

フェアトレード・ラボで活動する班は現在7班(役員班を除く)。各班が特徴のある企業コラボを進めています。2023年度における最後の授業では班ごとに活動を振り返り、発表を行いました。今年度の活動内容について、各班長から紹介していただきました。

imperfect班
ナナカフェ班
立花商店班

■ 「imperfect班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
伊勢 侑一郎
Z世代に向けたマーケティングにこだわり
「SNS映えするドリンク」を開発

【青学生をターゲットに、プロモーションにもSNSを駆使】

imperfect表参道とコラボし、表参道ヒルズ同潤館の店舗でオリジナルドリンクの開発と販売を行いました。Imperfect株式会社は「楽しさ」という要素を取り入れながらフェアトレードの啓発に努めている企業で、今回のコラボに当たってもマーケティングの基礎から商品開発、PR戦略に至るまでアドバイスをいただきました。プロジェクトのターゲット層は自分たちと同じZ世代とし、コンセプトは「限られた予算でおしゃれを楽しみたいZ世代に向けた、SNS映えするドリンク」に決定しました。そしてフェアトレード商品のナッツを使用した“飲めるナッツタルト”をイメージした「ハニーナッツタルトラテ」が完成しました。PR施策としては、特に青学生を意識して「授業の空きコマをimperfect表参道で楽しもう」といったコンテンツやメディア関係に携わった班員によるPR動画を発信するなど工夫を重ね、最終的に販売数は198個、売上約16万円、SNSインプレッション数約7,000を達成しました。

*2023年11月12日をもって閉店

【目標を数値化したことで、行動が明確に】

プロジェクトの振り返りとしては、班全体で数値目標を意識して共有できた点、授業以外の活動も含めて各自が積極的に担当業務を進められた点が良かったと思います。今回のコラボでは企業の方やグルメアカウントのインフルエンサーといった方々と直接関わることができ、仕事のノウハウや価値提供に関する考え方などを学び、吸収することができました。今後、企業などの組織で働く際に必要な協働意識なども身に付き、貴重な学びの機会となったと思います。

販売の際に添えられていたサンクスカード。フェアトレードの啓発と商品コンセプトの紹介を目的に同梱


【総合文化政策学部フェアトレード・ラボ】imperfect表参道とのコラボドリンク「ハニーナッツタルトラテ」を発売 | 青山学院大学 (aoyama.ac.jp)

■ 「ナナカフェ班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
稲田 恵理香
身近なナナカフェから青学生に発信。
純喫茶ブームをヒントにクリームソーダを開発

【お客さまの「おいしい!」の声が大きな励みに】

青山キャンパス7号館1階の「ナナカフェ」は青学生にとって身近な存在です。その存在感を生かして青学生へフェアトレードを訴求できればと考え、ナナカフェとコラボドリンクの開発を行いました。SNSなどを参考に学生のニーズを調査した結果、最近の純喫茶ブームをヒントとして前期商品は「さわやかクリームソーダ」に決定しました。フェアトレード製品のアガベシロップを使用したクリームソーダは大好評で、目標数を大幅に超える約1,300杯を売り上げました。後期にはクリスマスを意識して、フェアトレード製品のチョコレートパウダーを用いた「ホリデーホットチョコレート」を販売し、こちらも好評のうちに548杯を販売できました。ナナカフェの集客率向上に貢献できたことや、ドリンクを飲んでくださった方々から「おいしかった」という声をいただいたことに大きな達成感を得られました。反省点としては、ドリンクのフェアトレード要素がやや分かりにくかった点、SNSの活用が不十分だったことが挙げられます。今後の活動ではこの反省点を生かしていきたいと思います。

*2024年1月31日をもって閉店

【市場調査から販売まで、自分たちで進めた経験が財産に】

自分たちのアイデアを形にし、お客さんに喜んでいただく活動は本当に楽しいものでした。今回のコラボを通じて社会課題への理解が深まり、企業の方とも接したことで、立場が異なる相手や多様な価値観を尊重する姿勢が養われたと思います。個人としても班長経験は大きな財産になりました。リーダーとしてメンバーをサポートしつつ、チームを活性化していくスキルなどが学べた1年間でした。

班員それぞれの得意分野を生かしつつ、イチからフライヤーを作成。ラボ生の協力を得て、学内で配布

■ 「立花商店班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
中村 真希
渋谷ヒカリエのイベントに参加し、
オリジナルの工夫でフェアトレードを訴求

【「tiritUmo choco」の名に込めた思い】

食品商社の株式会社立花商店とコラボし、フェアトレードチョコレートのオリジナルパッケージと「tiritUmo choco(ちりつもチョコ)」というネーミングを手がけました。チョコの名は「慶も積もれば山となる」という言葉にちなんだもので、「フェアトレード商品の購入という小さな取り組みが生産者の笑顔につながる」という意味を込めたものです。パッケージには、ピスタチオ味のチョコをイメージした明るいグリーンを選び、生産者と消費者が手を取り合う様子やカカオのイラストをあしらいました。9月には渋谷ヒカリエで開催された「Tokyo Chocolate Salon」というイベントに参加してちりつもチョコを販売。11月には学内のセブン-イレブンでも販売し、目標の300枚を完売することができました。オリジナルチョコレートが完成し、イベントでお客さまに手に取っていただけたときの感動は忘れられません。また「Tokyo Chocolate Salon」では、食品卸業の国分グループ本社株式会社とも連携し、同社のフェアトレードチョコレートの販売支援も行いました。

【企業からのアドバイスが大きな力に】

企業の皆さまからは、企画立案のレクチャーなど積極的なサポートをいただき、大変感謝しています。今回のコラボを通じて、私たちの班は意見共有やプレゼンテーションのスキルを学ぶことができました。私個人としても、班長を務めたことで、責任感や行動力、みんなのモチベーションを高める力などが学べたと感じています。フェアトレードへの理解においても、実践的なスキルにおいても、ラボの活動から大きな学びが得られました。

■ 「学食班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
金谷 萌花
オリジナルレシピの「ナンタコス」を通じ、学食からフェアトレード啓発をアピール

フェアトレードの啓発と青学の学生食堂(学食)の利用促進を目標に、学生食堂とコラボしてオリジナルの「ナンタコス」を販売しました。ターゲット層にはエスニック料理が好きな学生を想定し、ナンタコスにはフェアトレード認証のカレー粉を使用しました。フライヤーや看板、SNSを用いてプロモーションを行ったところ、5日間の販売期間で目標の300食を完売することができました。想定より売り切れるのが早く、フライヤーが余ってしまったので、今後は別の告知方法を考えたいと思います。フェアトレード・ラボでは多くの学びがありました。この学びを生かして少しでも世界とつながって変えていけるような人間に成長していきたいと思います。

■ 「他大学班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
武田 至弘
他大学とも絆を育み、フェアトレード啓発の輪を広げる

中央大学の学生フェアトレード団体「FACT」、ネパールの生産者支援を中心にフェアトレード推進を行う有限会社ネパリ・バザーロと連携し、フェアトレードクッキーを販売しました。クッキーのパッケージデザインや販売用の展示物を作成し、学内のナナカフェや購買会で展開しました。FACTと合計で80セットを完売しました。アイデア出しや関係各所との調整に苦戦した場面もありましたが、自分たちのアイデアが実現した際の達成感は何事にも代えがたいものでした。ラボで学んだフェアトレードの知識や社会人としての基本的スキルを、よりよい社会づくりに生かしていきたいと思います。

■ 「イオン班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
山下 蓮
遊びを通じて子どもたちに向けてPR。レシピも配布し、ファミリー層を巻き込む

フェアトレードを子どもたちに伝えることを目的として「イオン厚木店」とコラボし、「CHiKaフェス(チカフェス)」というイベントに出店しました。会場では、約250名が参加し、カカオ豆をモチーフとした塗り絵、すごろく、子ども向けのフェアトレード動画の上映、中京大学から提供していただいた絵本の配布やイオンのフェアトレード商品を用いたレシピの配布などを実施しました。多くの子どもたちに、楽しみながらフェアトレードについて知ってもらうことができました。子ども向けのイベントでは「手軽な遊びや目を引く装飾を準備するべき」といった気付きも得ることができました。

CHiKaフェス向けて作成された「フェアトレードすごろく」

■ 「食品商社企業班」班長

総合文化政策学部 総合文化政策学科 3年
尾添 舜太
企業との関わりから実践的な学びを得た一年。経験を糧に、新たなチャレンジへ

今年度の目標は、フェアトレード商品を扱う食品商社の企業とコラボし、ポップアップストアで販売を行うというものでした。企業とミーティングを重ね、具体的なコメントをいただくなど貴重な学びを得ましたが、協賛商品の獲得やポップアップストア会場の確保が難航し、残念ながら今年度は見送りとなりました。振り返りとして、何かプロジェクトを推進するためには、相手方とのコミュニケーションの取り方を工夫すべきであること、タイミングに合わせた決断が重要であることなどの学びがありました。次年度は着実なイベント実施を目指すと決意を新たにしました。

2023年度青山祭に出店

ラボ担当教員 インタビュー

2023年度後期 フェアトレード・ラボ担当
南 真由美
自発的に考え、行動するフェアトレード・ラボ
の学びが将来へのヒントに

【「フェアトレード」と「企業視点」が学びのカギに】

当ラボでは、フェアトレードをテーマに、学生が自ら考え行動することで実践的な学びを得ることを目指しています。私が理事をしている認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンは、このラボに協力させているのですが、この度、在外研究中の森島豊先生に代わり、この半年間、学生たちと活動を進めてきました。フェアトレードに関する知見の提供および企業経験者としての実践的なアドバイスなどが主なサポート内容です。


【活動報告会を受けての総括】

企業との連携にあたっては、社会経験がない学生にとって企業担当者との連携や協賛商品の提供依頼といったハードルがあり、なかには苦戦していた班もありました。しかしこうしたリアルな体験こそが社会で役立つ実践的な学びになったと思います。特に柔軟なコミュニケーションスキルなどはラボ生全員に身に付けてもらいたい要素であり、今後のチャレンジに生かしてもらいたいと思います。

学内からは「ラボ生の取り組みを見て、フェアトレードの存在を知った」という声も届いています。ラボ生の皆さんは自分たちの活動に自信を持つとともに、引き続き「社会課題について自分は何ができるのか」という視点を育んでもらいたいと思います。社会を知ることは自身のキャリアを考える上でもきっと役立つはずです。

実践を交えて学んだ卒業生(AGU LiFE)

文化政策の領域で実践する
国際的な草の根の人間交流

独立行政法人国際交流基金
総合文化政策学部卒業

関 友哉

総合文化政策学部の1期生として学んだ関さんはフェアトレード・ラボに所属し、その精神などに触れたと語ります。現在は国際交流基金で国際文化交流業務に携わり、日本と海外をつなぐサーバント・リーダーとして活躍中です。

*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、特記事項があるものを除き、原則取材時のものです。