日本文学科創設60周年記念
私たちの「今」を照らす、
日本のことばと日本文学
2026.10.29
学生に伝えたい――
今、日本文学を読む意義
日本文学、日本語学、日本語教育という3分野を擁し、多角的に研究し続ける日本文学科。今回は学科創立60周年を記念して、3名の教員が鼎談を行いました。日本文学の多彩な魅力から現代とのつながり、文学研究の意義やその面白さに至るまで、テーマは多岐にわたります。今、改めて日本文学に向き合うことで何が見えてくるのでしょうか。
教員鼎談
【進行役(日本文学科主任)】
文学部 日本文学科 教授
韓 京子
博士(文学)(東京大学)。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。専門分野および関連分野は近世戯曲(人形浄瑠璃)・植民地朝鮮における日本古典芸能の享受。韓国檀国大学校日本研究所学術研究員、韓国慶煕大学校日本語学科助教授・副教授を経て、2019年、本学文学部日本文学科准教授、2022年同学部同学科教授就任。
文学部 日本文学科 教授
高田 祐彦
博士(文学)(東京大学)。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。専門分野および関連分野は、平安文学、とくに物語と和歌・近代国文学研究史。神戸大学教育学部、国際文化学部助教授を経て、1999年、本学文学部日本文学科助教授、2004年同学部同学科教授就任。
文学部 日本文学科 教授
山本 啓介
博士(文学)(青山学院大学)。青山学院大学大学院文学研究科日本文学・日本語専攻博士後期課程修了。専門分野は和歌・連歌・中世文学。日本学術振興会特別研究員、新潟大学准教授を経て、2017年に本学文学部日本文学科准教授、2021年同学部同学科教授に就任。
【1】 衝撃、寂寥の美、物語の力―教員が語る日本文学の魅力
韓 今回は、皆さんとの鼎談を通じ、私たちが日々感じている日本文学の魅力や研究の楽しさを学生の皆さんにもお伝えできればと考えています。まずは私から、自己紹介を兼ねてお話しさせていただきます。
私は日本近世の戯曲、特に近松門左衛門の浄瑠璃を中心に研究を行っています。幼少期まで日本で育った私は、当時から曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』などに親しんでいました。その後、韓国で理系の道に進んだものの、やはり文学を学び直したいと思ったときに「日本の伝統芸能には『心中』という死を専門に扱う人気ジャンルがある」と知ってカルチャーショックを受けました。韓国では伝統芸能のテーマとして自死というモチーフが描かれることはなかったからです。語り物のパンソリ*には親孝行や忠誠心のために自殺する場面は登場しますが、主なモチーフではありません。
*一人の歌い手と太鼓奏者が、歌・台詞・身振りを交えながら長い物語を紡ぐ、韓国の伝統的声楽芸能。
そこから日本の舞台芸能に興味を持ち、さらには近松作品における心中の方法の多彩さ、弱者の苦しみに寄り添う優しさ、文章表現の奥行きの深さなどに大きな魅力を感じるようになりました。
山本 私は鎌倉時代から室町時代までの中世の和歌と連歌を専門に研究しています。和歌には、たった三十一文字の中に込められた作者の意図をじっくりと読み解いていく面白さがあります。また中世という時代性も魅力的です。中世とは戦争や天変地異がうち続く動乱の時代でしたが、当時の歌人たちは荒廃した社会は詠まず、ひたすら物寂しく美しい風景を詠むのです。平安期の華やかな和歌と異なり、作品の根底に喪失感や寂寥感がある。それが中世の和歌の特徴です。
実は私は十代の頃は現代文学に興味を持っており、特に村上春樹が描き出す現代社会への違和感や喪失感に引かれていました。そうした村上作品とも共通する要素を中世の和歌に感じるときもあります。
高田 私は『源氏物語』を中心とした平安文学を研究しています。私にとって『源氏物語』の魅力は、まず物語自体が持つ「場の力」にあります。物語とはことばによって創造された、現実以外の「もう一つの世界」であり、優れた物語世界は作者と読者、あるいは読者同士がつながる「場」としての機能を持っています。『源氏物語』はその「場の力」が突出しているのです。
さらに作品の斬新さも魅力です。『源氏物語』は、作中に情感豊かな和歌を取り込むことで、読者の没入感を劇的に高めました。これが先ほどの「場の力」の秘密の一端です。『源氏物語』とは、和歌を取り込むことで日本の物語文学を一新した画期的な作品なのです。
私が『源氏物語』の魅力に開眼したのは大学生のときでした。ある先生が、光源氏と六条の御息所との別れや光源氏の衰運を描いた巻「賢木」の読みどころを詳しく解説してくださったことがきっかけです。作品の奥深くまで分け入るようなその読解は、受験用の勉強とは全く異なるもので、当時の私は文学研究の面白さに大きな衝撃を受けました。
【2】 恋愛観から「ことば」の来歴まで―私たちの「今」を照らす古典文学
韓 古典文学は、作品が書かれた当時から今日まで多くの人に愛され続けています。現代の学生は、古典をどのように読んでいるのでしょうか。
高田 最近印象的だったのは、『源氏物語』を男性同士の友情という切り口から研究した学生がいたことです。その友情についても、微妙な恋情をも含むものとして非常に多角的に捉えていました。
また、青学のカレッジソングは、「紫匂う」と始まるものですが、その「紫」は、古代の武蔵国では紫草が著名な産物だったことによるのですね。そうした身近な問題から古典に目を向けて、『古今集』や『更級日記』などから近代のさまざまな校歌への流れを探る、という研究なども、とてもおもしろいものでした。
韓 学生の間では、映画『国宝』が大きな話題になっていました。近松の『曽根崎心中』をモチーフとしたこの作品をきっかけに、多くの学生が古典に興味を持ってくれたようです。ある学生は地元に伝わる人形浄瑠璃に注目し、その継承をテーマに卒論に取り組んでいます。
また、実は私自身が学生時代に古典作品に救われた経験があります。留学生として日本に来てからの一年間は受験勉強に打ち込んでいたのですが、周囲の若者がにぎやかに過ごすなか、夜更けまで机に向かっているとふと孤独を感じることがありました。そんなとき、手元にあった『徒然草』の一節が目に留まりました。それは「ひとり灯火のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる」という箇所で、「一人で明りの下で本を広げて、昔の人を友とするのはこの上なく心が慰められることだ」という意味です。それを読んだ私は「これはまさに今の私のことだ!」と感じ、「そうだ、私は今、自分にとって一番楽しいことをやっているんだった」と元気を取り戻すことができました。
今の学生にも、同じように古典を力にしてもらえればと、1年次の授業では必ずこの話をしています。
『絵本徒然草 3巻』十三段(出典:国立国会図書館デジタルコレクション)
山本 時代を越えて読み継がれてきた名作には現代人にも寄り添う力がありますね。『方丈記』には、当時の大震災や火災や飢饉に直面した人々の姿がリアルに描かれています。現代の私たちも災害に遭うと心が痛むのですが、そうしたときに『方丈記』を読むと「昔の人もこうだったのか」と孤独から救われることがあります。
実は古典文学とは、当時の最新ニュースや人々の感覚がリアルタイムで記された、非常に生き生きとしたものです。戦乱や災害といった未曽有の事態を前に、先人がもがきながらも乗り越えてきた姿を知ることは、「不確実性の時代」と呼ばれる現代の私たちにも大いに参考になるものだと思います。
韓 お話のように、文学の力は時代を超えて読み手に働きかける一方、「その時代ならでは」の形で発揮されることもありますね。
例えば人工知能であるAIが著しく発展した現代では、文学を通じて「自分とは、人間とは、社会とは」と考える力がさらに重要性を増していると思います。さらに、自らの思考を口頭での会話や文章表現につなげる力も文学に親しむことで培われます。日本文学に関する考察と発表というプロセスを繰り返す日本文学科は、その鍛錬の場の一つになると思います。
山本 AIやSNSの発展によって、現代は玉石混交の情報があふれています。そうしたなかで日本文学を読み込み、ことばの感覚が磨かれていくと、「このことばは話し手の覚悟が伴った『力』のあるものか、そうではないのか」という違いが見えてくる瞬間があります。ことばのわずかな違和感や温度感を手掛かりに、その奥にあるものを拾い上げる行為は「行間を読む」という感覚とも似ています。現代においてさまざまな「真贋」を見極めるには、こうした皮膚感覚が重要になってくるように思います。
学生の指導に当たる山本教授
高田 「ことばそのもの」が持つ意義は大きいですね。ことばとは人間の思考や価値観の源なので、ことばのなりたちをたどることで「今、ここにいる自分とは何者なのか」が見えてきます。日本の歴史の中でどのようなことばが生まれ、引き継がれ、あるいは失われていったのか。失われたことばを知ることで、ことばとともに失われてしまった当時の価値観や感覚を再発見することもできます。
時間的な影響とともに地理的な影響にも目を向けてみることが必要ですね。古くは中国や韓国、江戸期以降は欧米のことばからも日本語は影響を受け、その度に日本人の意識は大きく変化してきました。
このように、日本語や日本文学を知ることで、歴史的な経緯を含めた深い次元から「今」を見つめ直すことができるのです。
【3】 重なり、移ろう―「日本文学らしさ」を形づくるもの
韓 ここまで、日本文学や日本語が現代の私たちにもたらしてくれるものについて考えてきました。ここからは「日本文学らしい魅力」を形づくっている文章表現や、その背景について考えてみたいと思います。
私が特に「日本文学らしさ」として魅力を感じているのは、表現の「重層性」ですね。近松門左衛門の浄瑠璃作品でも、同音異義語である「掛詞」などを駆使することで、一つの文章にいくつもの意味を重ねています。また、時間的な重なりも重要です。近松の作品が古い和歌や漢詩を踏まえているように、日本文学は過去の名作をリメイクし続けている点もユニークだと思います。ことばの重層性に時間の重層性が加わることで、日本の文学作品にはさらなる奥深さが生まれているように感じます。
山本 掛詞はもちろんのこと、「時間の重層性」は和歌においてもよく見られます。それは「本歌取り」という技巧で、自分の歌に過去の名歌を取り入れるものです。その根底にはいにしえの歌人への敬愛の念があり、例えば中世の『新古今和歌集』の歌人たちは古代の『万葉集』の作品を取り入れています。このようなゆるやかな「作者」のありかたは連歌にも表れています。連歌では、最初の人が詠んだ句に、次の人が自分なりの解釈を加えた句をつなげていき、その意外性や取り合わせの妙を楽しみます。連歌では、作者や作品の意図が常に移ろっていくのです。
日本文学とは日本文化の肝心な領域を占めるものですので、こうした文芸形式にも日本人が育んできた感性や価値観が表れているように思います。あえて主体を固定しない、この「移ろい」が面白さの大事なところだと思います。
高田 「移ろい」というキーワードは『源氏物語』においても重要です。まず主語が曖昧ですし、場面や文脈もいつの間にか別のものに変化していたりします。そしてこの「移ろい」はネガティブなものではなく、むしろ作品世界の豊かな広がりや余韻、連歌にも見られる意外性の面白さなどを生み出すものとしてポジティブに機能しています。
こうした「重層性」と「移ろい」という特徴は古典文学に顕著ですが、一種の型に昇華して現代にも受け継がれています。これらの要素を今の文学作品の中に探ってみるのも面白いかもしれません。
【4】 「この感動を伝えたい」から始まる文学研究――文学を大学で学ぶ意義
韓 古典文学から現代文学に至るまで、文学作品とは本来、一人でも読んで味わえるものです。それを学問として研究し、大学で専門的に学ぶことにはどのような意義があるのでしょうか。
高田 何か素晴らしい作品に感動したときに、「誰かにこの作品の魅力を伝えたい」と思ったことのある方は多いでしょう。そうした初期衝動こそが文学研究の原点のひとつです。作品の魅力をより深く理解し、味わうためには、自分が受けた感動の要素を見つめ直してみることが役に立ちます。この作品のどこが、どのように素晴らしいのか。この作品に込められた、より深い意図はなんだろうか。それらを知るために、作中で使われていることばを調べてみる。さまざまな資料を集めて、著者の思想や当時の社会的背景などを調べてみる。こうした営みが研究のプロセスです。
まずは学生自身が自分なりにとことん探ってみる。それでも行き詰まったときには、教員が新たな資料や視点を示し、学生が再び先へ進むための「補助線」を引く。こうした手助けが、われわれ大学教員の果たす役割のひとつだと思います。
山本 「作品の表現やストーリーを味わうだけでなく、社会問題や思想、比較文化など、文学には無数の切り口があります。大学教員という「読解のプロ」と読んでいくことで、自分だけでは見えなかったものが見える、研究の域まで到達できるというのが大学で文学を学ぶ意義かと思います。
韓 そうした文学研究を支えるものとして、本学の日本文学科の開講科目、そして本学科ならではの特長を見ていきたいと思います。
高田 教育の中心となる授業は「演習」や「日本文学特講」、そして各教員のゼミナール(ゼミ)です。「演習」や「卒論ゼミ」は少人数で行うので、授業の密度が濃く、学生が質問や相談をしやすい環境になっていると思います。
こうした演習形式の授業では学生の主体的な研究と発表が中心となります。自分の発表に手応えを得たり時には思うような反響が得られなかったりと、試行錯誤を繰り返しながらも少しずつ本格的な「学問」の世界に歩み入っていく数年間は、人生にとってかけがえのないものになるのではないでしょうか。
山本 演習形式の授業では他の学生の意見を聞けるので、自分だけでは得られなかった発見がありますね。私のゼミでは連歌の実作も時々遊びで行うので、学生たちは意見を出し合いながら楽しく取り組んでいるようです。
韓 私の授業でも、皆で心中を題材とした作品である心中物(しんじゅうもの)の作品を読んでいたところ、ある学生が「なぜ心中の手段は刃物を使うものばかりなのでしょう。道行(死出の旅路)で橋を渡るときに、川に身投げする方が確実なのでは」という疑問を打ち出してきたことがありました。私自身にそうした発想はなかったので、非常に勉強になりました。こうした瞬間があるのも授業の楽しさですね。
山本 また、時代、分野とも網羅している範囲が広いのも本学科のポイントだと思います。上代から近現代までの各時代、さらに文学、語学、日本語教育と3つの分野が揃っていますし、古典の原典(古写本など)を読むために必要な「くずし字」(変体仮名)の読解といった専門的な知識もしっかりと身に付けられます。さらに各分野の壁を越えて教員同士が緊密に連携しているので、ジャンルをまたいだテーマの研究もスムーズです。
韓 最近では、海外の映画やドラマなどと比較して日本文学を論じる学生も増えてきています。海外での研究や教育経験が豊富な教員が多く、国際的な環境が整っているのも強みですね。海外での学会発表や、海外の大学の所蔵資料の閲覧に関する指導も充実していますし、海外の専門家を招いての講演やシンポジウムも好評です。また留学生を対象とした科目も設置しています。
山本 海外における日本文学研究から刺激を受けることもできますし、留学生と意見交換することで互いに視野が広がりますね。
韓 ここまで、文学研究の意義から本学科の教育環境までを見てきました。本学科の学生たちは、卒業後どのような分野に進んでいるのでしょうか。
高田 ことばを中心に扱う分野としては、作家を含めた執筆業や広告業界、さらにアナウンサーや古典芸能などがあります。卒業生には作家の伊藤比呂美氏、姫野カオルコ氏、広告業界では國領文子氏などがいらっしゃいますね。また、中学・高校の国語教員や海外での日本語教師も含めた教員も多いようです。
山本 金融系などの一般企業や行政の分野などでも広く活躍していますね。日本文学や日本語の学習から培われた言語能力やコミュニケーション力に加え、研究の過程で身に付けたデータ分析のスキルなども仕事に生きているようです。
【5】 「生きる力」を養う日本語と日本文学
韓 最後に、本学科の展望と学生へのメッセージをお願いします。
山本 日本文学科として守り続けたいものは、文学の本質である、ことば、表現、作品に丁寧に向き合って読んでいくことですね。時代が変化してもその点だけは変わらないと思います。
高田 学生からは「文学作品やことばによって強く励まされた」という声を数多く聞きます。大学時代を通じ、時にはもがきながらも日本語や日本文学の世界にとことん夢中になってみるという経験は人生を豊かに実らせてくれることでしょう。そのためにも、学生の皆さんには、年代や国の内外を問わずできるだけ多くの作品を読んでほしいと思います。本学科も研鑽を続け、日本文学や日本語学、日本語教育を志す学生にとって信頼できる学び舎であり続けたいと思います。
韓 教育や研究の軸は守りつつ、その精度をさらに高めるための工夫は積極的に取り入れていきたいですね。その一つとして、現在はデジタル人文学的なアプローチも進めています。また、近年の海外における日本語教育の需要の高まりを受けて、「登録日本語教員養成機関」としての登録に向けた準備も進めているところです。日本文学科は、伝統的な文学研究をさらに深めるとともに、時代に即した新しい挑戦を続けています。「伝統」と「挑戦」の両方があるからこそ、私たちは社会のどこでも通用する力を養うことができるのです。古典から近現代文学までを対象とした文学の本質への探求をはじめ、最新のデジタル技術を用いたアプローチや、世界とつながる日本語教育まで、ここには、皆さんの知的好奇心を存分に満たす環境が整っています。時代を超えて受け継がれてきた日本語と日本文学の魅力を、ぜひこの学び舎で一緒に探求しましょう。
日本文学の知を海外に発信する
文学部 日本文学科 教授 小松 靖彦
「日本文学科」という名称
青山学院大学文学部日本文学科は1966年に創設されました。当時の大学では、「国文学科」という名称が一般的であったなかで、「世界的視野に立つ新しい日本文学(日本文化)研究」という理念を掲げ、日本文学(日本文化)の海外への紹介と相互の文化交流を担う学科にふさわしい名称として「日本文学科」が選ばれたのです。
創設から60年、この理念のもと日本文学科は着実な歩みを進めています。1996年に、日本語教育を学ぶコースを設置、また、2005年からはほぼ毎年、海外の研究者を招いた国際シンポジウムや講演会を開催し、これらの成果は書籍化されています。
留学生のための日本文学入門書
日本文学科には約30人の留学生(学部生)が在籍しています(学科の在籍者数の約5%)。留学生が日本文学に関する専門的知識を身に付けるための入門科目として、2013年度から「日本文化文学入門」を開講。2017年、日本文学科は、『留学生のための日本文学入門』というテキストを学内版として制作し、2021年にこれを増補して、和泉書院から出版しました。
本書の出版以前、日本文学に絞った、留学生対象のテキストはありませんでした。そこで、日本文学・日本語学・日本語教育学が専門の教員が知恵を出し合い、海外の大学で日本語・日本文学を教える研究者たちからもアドバイスをもらいながら制作しました。
本書は日本文学の特徴と歴史をはじめ、その基礎にある、日本の文字や日本語の特徴、また日本文学の理解に必要な、日本人の一生・宗教・暮らし・建築・季節行事・民話・音楽・絵画など、日本文化についても解説しています。留学生のみならず、日本文学について専門的知識を得たいという若い人々へのナビゲーターとなっています。
海外文学との関わりの中で日本文学を考える
さらに、2023年、武蔵野書院から『文学交流入門』を出版しました。本書は、2013年度から開講されている「文学交流科目群」(「日本学入門」「文学交流入門」「日本文学とアジア」「日本文学とアメリカ・ヨーロッパ」「日本文学研究のための英語」など)のテキストとして編まれたものです。「文学交流」とは、異なる文化的背景を持つ個人や集団が、互いの文学と関わり合い、相互理解を深め、この交流を通じて新たな価値を創造する相互的プロセスを言います。
本書の制作にも、専任教員・非常勤講師はもちろん、協定校など日本文学科とつながりのある海外の研究・教育機関の研究者に関わってもらいました。アメリカ合衆国・西ヨーロッパ・中国はもとより、太平洋地域、インド、ポーランド、スロベニア、セルビア、ウクライナ、トルコ、ラテンアメリカなどの地域での日本文学と海外文学の交流も紹介しています。
たとえば、「文学交流入門」の科目では、本書を使い、古代東アジア世界の文学交流から現代の「越境文学」(日本語を非母語話者とする作者の文学)までを俯瞰、翻訳を理論的に捉え直し、日本文学が海外に与えたインパクトについて考察しています。受講する学生たちからは、言語という壁があっても文学作品を通じてつながり合えることを実感した、という感想が寄せられました。
日本文学の知を発信する
今日、海外の多くの若い人々が日本語・日本文学・日本文化に関心を持っています。国際交流基金の2024年度「海外日本語教育機関調査」によれば、海外日本語学習者数は400万人を超えています。
日本文学に関する専門知を身につけ、それを海外の若い人々と共有し、その人々とともに新しい知を紡ぎ出してゆく。本学日本文学科は大きな理想を描いて、人材の育成に努めています。
在学生・卒業生の声(AGULiFE)
研究紹介(AGU RESEARCH)
*掲載されている人物の在籍年次や役職、活動内容等は、取材時のものです。