特集 2
Interview

PROFESSOR' S
REPORT

成長を見守る教育者であり、妥協を許さない研究者でもある。
「質」へのこだわりが息づいている。

青山学院大学の教員は皆、真理を追求し本質に迫ろうと努力するその先には、「わからなかったことがわかる」喜びが待っていることを知っています。その喜びを共にわかちあおうと学生たちの自由な意志を尊重しつつ、個々に備わった力を引き出すことにベストを尽くしています。そして、各学生が研究を通して得た「本質を見極める力」は、先行き不透明な時代を突破する力となるでしょう。今回は、これまでの多岐にわたる経験や研究、現在の活躍など、本学の教員をさまざまな角度からご紹介します。

総合文化政策学部 総合文化政策学科 教授

飯笹 佐代子

2006年、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)(一橋大学)。総合研究開発機構リサーチフェロー、ニューサウスウェールズ大学アジア・オーストラリア研究所客員フェロー等を経て、2016年より現職。専門は多文化社会論、移動研究(移民・難民・シティズンシップ)、越境文化論、オーストラリア研究、ケベック研究。主な著作に、『シティズンシップと多文化国家一オーストラリアから読み解く』(日本経済評論社、2007年、第24回大平正芳記念賞受賞)、『海境を越える人びと一真珠とナマコとアラフラ海』(共編著、コモンズ、2016年)、『応答する〈移動と場所〉―21世紀の社会を読み解く』(共著、ハーベスト社、2019年)、『オーストラリア多文化社会論一移民・難民・先住民族との共生をめざして』(共著、法律文化社、2020年)、『現代カナダを知るための60章【第2版】』(共著、明石書店、2021年)、『大学的オーストラリアガイド一こだわりの歩き方』(共著、昭和堂、2021年)など。

多文化が共存する社会の実現に向けて、アートの力に着目

多様な文化や宗教、価値観が平和に共存する社会を実現していくための考え方や政策について、多くの移民、難民を受け入れてきたカナダやオーストラリアなどの事例から研究しています。民族や宗教の対立によって国家が解体してしまうこともある一方で、多民族が共存している国も存在する。その違いに興味をもち、国際政治学を専攻しました。

国際社会の最前線で生じる事象を扱うからこそ、現場感覚を大切にしています。一方向からの情報を鵜呑みにせず、現地の人々の声に耳を傾け、研究対象をできるだけ多様な視角から捉えることに努めてきました。今でも印象深いのは、インドネシアの「海の民」と呼ばれる人々と出会うことのできた調査です。何世代にもわたりオーストラリア沿岸にまで及ぶ広い海域を生活圏としてきたにもかかわらず、ある時から境界が引かれてしまい、自由な往来がかなわなくなった。そんな彼らの理不尽な体験を聞くことで、国境を含むさまざまな「境界」について考えさせられました。

近年、世界各地で紛争などによって国境を越えて祖国を逃れる難民が増え、先述の「海の民」が操縦する船で海を渡る人もいます。他方で、受け入れ国の中には難民を排斥する勢力の台頭も見られます。このように人々を分断し、共生を阻む政治に対抗するために期待しているのが、アートのもつ力です。アート作品や映画が発信するメッセージが、人々の難民問題への関心を喚起し、多文化共生を推進する上でどのような影響をもつのか。アートと社会、政治との関わりに注目しながら、新たな研究の展開をめざして挑戦を続けます。

国際芸術祭シドニー・ビエンナーレの会場のひとつとなる現代アート美術館
AGU RESEARCH | BACK NUMBER
オリンピック開会式の「芸術プログラム」を読み解く
飯笹 佐代子 教授

本コラムでは、オリンピック・パラリンピックが開催されたシドニー、ロンドン、リオデジャネイロ各大会開会式における「芸術プログラム」に着目しています。それぞれの演出に込められた多様性と共生をめぐる物語を読み解きます。

世界を読み解くコラム

「SSARC モデル」が導く一人一人の認知能力に適した学び方を選べる未来

文学部

ロビンソン, P. J. 教授

Task-Based Language Learning(タスクに基づく言語学習)の先駆者であるロビンソン, P. J. 教授が確立した「SSARC モデル」理論は、さまざまな国の研究者に広がり発展しています。

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数十年先の人口分布を町丁・字単位で予測し
都市計画や防災計画の基礎となるデータを提供する

経済学部

井上 孝 教授

人口構造の変化を長期的かつ詳細に見通すことは政策立案に欠かせません。井上教授は古典的理論を応用して画期的な方程式を編み出し、全国小地域別将来人口推計を実現させました。

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サービス品質を可視化し、これからの「顧客満足」のあり方を探求する

経営学部

小野 譲司 教授

サービス産業での顧客満足度を可視化するものとして広く活用されている「JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index:日本版顧客満足度指数)」調査から、日本におけるサービスのあり方について考えます。

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AGU RESEARCH

私たちが生きている世界には、身近なことから人類全体に関わる大きなことまで、様々な問題が溢れています。それらの実態はどうなっているのか、本質はどこにあるのか。意外に知られていない現状や真相を、本学が誇る教員たちが興味深い視点から解き明かします。