特集 1
Interview

進路・就職サポート
2021

青学生の進路選択・就職活動状況

新型コロナウイルス感染症の感染拡大をはじめとしたさまざまな社会状況の変化を受け、本学学生の就職活動もこれまでにない大きな変化の時期を迎えています。今回は、保証人の皆さまに向けて、最新の就職活動の状況と、実際の本学の進路・就職支援の取り組みについてご紹介します。

進路・就職センター 進路・就職部 事務部長

祖父江 健一

愛知県滝高校出身、1977年本学経済学部入学。在学中は大学男子寮・常青寮(現在の青山学院アスタジオの場所)で約160名の仲間と寝食を共にしつつ、毎週末は理工ヨット部の合宿所(逗子)で過ごす。1981年、学校法人青山学院入職。男子寮副寮監、情報科学研究センター(現メディアセンター)、就職部課長、中等部事務長を経て、2018年より現職。2020・2021年度大学職業指導研究会会長。日本キリスト改革派新座志木教会会員。

就職活動の最新状況―社会状況と連動する就職活動

在学生の保証人の皆さまは、80年代後半のバブル世代に近い方が多いのではないでしょうか。先ず初めに、「保証人世代とは社会状況が大きく変化しており、故に、今の現役世代の就職活動状況とは大きく異なってきている」との認識をあらためてお願いしたいということです。例えば大学進学率では保証人世代が約25%だったのに対し、現在は50%以上と2倍以上に伸びました。一方で経済成長率は年平均4.2%から0.82%へ大きく下がり、大卒求人倍率も、2.41倍から1.50倍へと減少しました。1990 年代後半にはインターネットを活用した就職情報サイトが登場し、紙媒体からネットによる就職活動へと大きな転換があったことは申すまでもありません。

もとよりネットを軸とした就職活動環境の中で新型コロナウイルスが出現し、更なるデジタル化へと急激に社会全体がシフトしたニューノーマルのもとに、2021年3月に卒業した現役世代は就職活動を行なわなければならない状況となりました。想定されていなかったリモートワークや本学でもオンライン授業など、face to faceでの対面から全てがオンラインへと劇的に変化し、学生の就職活動・企業の採用活動は、その時期や採用手法・チャンネル(採用側の企業と志望学生との接点)等において、全てに大きな変化が生じました。

就職みらい研究所『保護者が知っておきたい就職活動に関するデータ data12』「data1:世代による環境の変化」より

さて皆さま、ここで思い出していただきたいのが、2018年10月、経団連が発表した横並びの新卒一括採用を見直すという「2021年4月入社以降の就職・採用活動ルール撤廃」です。日本の良き雇用形態であった終身雇用制(私はそう思っています)の維持が難しくなり、変化の激しいグローバル化の大波を受けて新卒一括採用だけに頼るのではなく、良い人材がいれば都度採用したいという既卒の中途採用(外国人を含めた)への企業の動きが大きく絡んでいると考えています。

厚生労働省から「採用広報開始日は3月1日、採用選考開始日は6月1日」との就職・採用活動ルールは示されていますが、実態としてこのルールは形骸化しており、時期を問わずに学生を採用する通年採用の企業が多くなりました。リファラル採用(現社員の人的ネットワークを利用して採用に結び付ける手法)やオファー型採用(学生側からインターネットや逆求人イベントを通じて自己アピールを発信し、企業から声を掛かるのを待つ)といった新しい採用チャンネルの多様化や細分化が進んでいます。

「良い人材がいれば都度採用したい」として、既卒の中途採用へシフトする企業が増えている(イメージ)

早期化に伴う就職活動の長期化―進路・就職支援の意義とは

新型コロナウイルスの出現による急激なオンライン社会への変化と就職・採用活動ルールの形骸化、この両者が合わさり融合したことで、2021年3月の卒業生は更なる就職活動の早期化に追われることとなりました。実際のところ、3年生の3月時点で内々定を獲得して就職活動を終える学生も珍しくはありません。しかし、就職活動を早期に終えられる学生ばかりではありません。問題の本質は、早期化からくる就職活動の長期化にあり、我々の進路・就職支援は、ここに存在意義があると考えています。

頑張って頑張って就職活動を行っても結果が得られず、長期化することで負のスパイラルに陥ってしまい、「内定が得られないのは自分が悪いからだ」と悩み落ち込んでしまう学生がいます。しかし、「大丈夫だよ、まだ青学の学生には堅実で良い企業から多くの求人が届いているよ。」と、毎年約1万件を超える進路相談を通して学生に声をかけ続け、そうした本学への求人の実体を知ってもらい、モチベーションを上げることで自己肯定感を育み、再び立ち上がって、神様が与えた賜物である本来の力を取り戻して面接に臨めるようになってきます。本学の学生は、もともと地頭が良く、素直で人見知りをしないおっとりとした学生が多いと感じています。少しだけ、そっと背中を押せばやがて自信を取り戻して見違えるように目線も上がり、内定が現実のものとしてやって来ます。

本学の学生は、時代に応じて変化に対応する「逞しさ」も身に付けけています。それは、コロナ以前の2019年度とコロナ後の2020年度就職者上位企業の違いを見ていただければ分かります。BtoB企業に目を向ける学生が増え、かつての有名・大企業への「集中」から知名度や会社の規模には以前ほどこだわらない「分散」へと就職活動の全体像も変化してきました。最近の進路相談では、「名前は知られていないけれど、隠れた優良企業があれば教えてください」という学生からの問い合わせが増えています。知名度は一般的には知られていなくても、日本には高い技術力を持ち世界的なシェアを有する隠れた優良企業は少なくはありません。コロナの影響を受けた企業が残念ながら採用中止となる中で、志望業界の変更を余儀なくされた学生たちも、着眼点を新たにすることで上手に方向転換を果たし、納得のいく結果につなげています。

[2019年度 就職者 上位企業]

企業名
全日本空輸(株) 3 38 41
楽天(株) 21 16 37
日本航空(株) 3 28 31
日本生命保険相互会社 4 22 26
日本電気(株) 9 12 21
(株)りそなホールディングス(りそなグループ) 10 10 20
SMBC日興証券(株) 10 9 19
(株)JALスカイ 0 19 19
第一生命保険(株) 2 17 19
(株)みずほフィナンシャルグループ(みずほフィナンシャルグループ) 6 13 19
三井住友信託銀行(株) 3 16 19
明治安田生命保険相互会社 3 15 18
あいおいニッセイ同和損害保険(株) 2 15 17
東京海上日動火災保険(株) 4 13 17
三井住友海上火災保険(株) 3 13 16
SCSK(株) 6 9 15
(株)ニトリ 9 5 14
パーソルキャリア(株) 2 12 14
JFE商事(株)(JFEグループ) 6 7 13
パーソルプロセス&テクノロジー(株) 6 7 13
富士ソフト(株) 10 3 13
富士通(株) 7 6 13
ソフトバンク(株) 9 3 12
日本アイ・ビー・エム(株) 7 5 12
東日本旅客鉄道(株) 4 8 12
三井不動産リアルティ(株) 4 8 12
(株)三菱UFJ銀行 1 11 12
大和ハウス工業(株) 10 1 11
(株)ベイカレント・コンサルティング 4 7 11
レイス(株) 6 5 11

[2020年度 就職者 上位企業]

企業名
楽天(株) 16 24 40
日本生命保険相互会社 3 27 30
明治安田生命保険相互会社 0 19 19
東京海上日動火災保険(株) 2 14 16
トランス・コスモス(株) 10 6 16
伊藤忠テクノソリューションズ(株) 9 6 15
住友生命保険相互会社 1 13 14
TIS(株) 10 3 13
SMBC日興証券(株) 3 9 12
三井住友信託銀行(株) 0 12 12
日本アイ・ビー・エム(株) 7 4 11
(株)みずほフィナンシャルグループ(みずほフィナンシャルグループ) 4 7 11
三井不動産リアルティ(株) 0 11 11
あいおいニッセイ同和損害保険(株) 3 7 10
第一生命保険(株) 1 9 10
富士ソフト(株) 8 2 10
富士通(株) 4 6 10
(株)三井住友銀行 4 6 10
(株)三菱UFJ銀行 3 7 10
SCSK(株) 3 6 9
(株)JTB(JTBグループ) 4 5 9
(株)システナ 3 6 9
凸版印刷(株) 2 7 9
パーソルプロセス&テクノロジー(株) 5 4 9
(株)横浜銀行 3 6 9
NECソリューションイノベータ(株) 6 2 8
大日本印刷(株) 6 2 8
(株)ニトリ 5 3 8
みずほ証券(株) 3 5 8
レイス(株) 3 5 8

「柿の実理論」と就職支援のポリシー

新型コロナウイルスの影響は、学生の行動にもさまざまな変化をもたらしています。これまで学生たちはキャンパスで交わす自然な会話の中から共に励まし合い、意識せずとも共に気付きを与え・与えられる中で厳しい就職活動を乗り越えていくこともできました。スロースターターのカメさんタイプの学生でも学食での友人との何気ない会話、キャンパス内で髪を茶から黒く染め直してリクルートスーツで歩く仲間の姿など、目に見える周囲の状況から自分の立ち位置を把握・判断して行動につなげることができていました。ところが、新型コロナウイルスの影響で対面コミュニケーションが減り、今まで当たり前のように「なんとなく」情報が入ってきていた学生には自分の置かれている状況が見えなくなり、自ら意識して情報を取りにいかなければ何も情報は得られない時代になりました。Withコロナにおける現在の学生には、以前にも増して、強い自覚と主体的な行動が求められています。

まさに激動の時代とも言える昨今ですが、本学の進路・就職支援ではかねてより重視している考えがあります。それは、学生にとって内定獲得がゴールではなく、入社してからの働き方も含めた「卒業後の生き方こそが大切である」ということです。

本学ではキリスト教信仰にもとづく教育理念のもと、スクール・モットー「地の塩、世の光」を礎として「すべての人と社会とに対する責任を進んで果たす人間」の育成を教育方針としています。大学時代は学生の本分である勉学や課外活動等に打ち込むことで人間としての足腰が鍛えられるものです。柿の実が自然に熟して色づくのを待つように、それぞれの学生の成長速度に応じて人間性を豊かに育んでいきたいと考えています。

この「柿の実理論」をふまえた上で、本学ではさまざまな進路・就職支援を行っています。例えば1・2年生に対してはダイレクトな業界研究や企業紹介は敢えて行わず、ホスピタリティやSDGs、金融リテラシー等といった様々な切り口からの社会的課題や学生にとっても身近なテーマから、社会や仕事との接点について自らの頭と心で考えることを後押ししています。

柿の実が自然に熟して色づくのを待つように、じっくりと腰を据えて学生の人間性を豊かに育む(イメージ)

With コロナの中で実際の進路・就職支援プログラムについて

その具体例として、2018年より日本航空株式会社(JAL)のご協力を得てホスピタリティを学ぶ「ホスピタリティ・マネジメント講座」(全15回シリーズ)を実施してまいりました。この講座は学生自身が1つの進路を考える機会として進路・就職センターのプログラムとして始めました。2020年12月、JALと本学に連携包括協定が結ばれ、2021年度後期 からは青山スタンダードの正課科目となりました。一般的には進路・就職支援と授業とは別と捉えられるかもしれません。しかし、本学では、社会の発展と人材育成寄与への観点から授業カリキュラムとの有機的な連携を図っています。

本年3月には国際的SDGs活動の若きリーダーであり本学卒業生でもある市川太一氏によるワークショップ『先輩に聞く「SDGsの世界」』をオンラインにて開催いたしました。(10月~続編シリーズを実施決定)

その一方で、社会や仕事に対する高い意識を持つ学生を対象に、昨年からは「WEB仕事理解プログラム」という業界・企業研究を行うワークショップを立ち上げました。1・2年生に大変好評を博しており、これは上智大学・立命館大学・本学の3大学の学生による合同ワークショップを企業の協力を得て実施しています。敢えて異なる大学から成る混成グループを作り、オンライン上で活発なディスカッションを展開していきます。考え方や意識も異なる様々な学生が参加する中でコミュニケーション力の向上促進とともに、卒業後の進路を考えるヒントが与えられていきます。

既に本学は学年の壁を取り払い、各種ガイダンス・セミナーをはじめとした就職支援(オンライン中心)を行っていますが、特に個別相談(全学年対象・希望者には対面で)と就職活動を継続中の4年生に対する「青学生ウェルカム企業」の限定求人紹介セミナーには力を入れています。就職活動の後半に差し掛かっても思うように内定を得られていない学生や、相談実績のない学生に対しては私どもから学生または保証人の方へ個別に電話を差し上げてコンタクトを取り、できるだけ孤立を防ぐケアを行っています。

また、近年増えつつあります発達障がいの方など障がいを持つ学生、外国人留学生やLGBTの学生への就職支援といったインクルージョン&ダイバーシティへの取り組みも、障がい学生支援センターなどの部署と相互連携を図り、学生1人1人へ誠意を持った丁寧な対応を心がけています。

就職支援の対象は卒業生にも広がりを見せています。今年9月23日(木・祝)の「大学同窓祭」(今年度は初のオンライン開催)では、在校生就職支援委員会(校友会大学部会)による「セカンドキャリア」をテーマとした卒業生を対象としたイベントが開催されました。これも、「地の塩、世の光」として全ての卒業生にいつまでも輝いてほしい、との考えから実施されたものだと伺っています。もちろん、われわれも卒業後3年ぐらいまでの既卒生には進路相談や既卒者用求人票閲覧の対応にも応じています。今後は卒業生アンケートなどを通じて本学の取り組みに関する客観的な検証も行いたいと考えています。


本学卒業生の起業家・市川太一氏によるキャリア講座も開催
詳細、申し込みは学生ポータルでご確認ください

保証人の方に求められるお子さまへのサポートとは

コロナの影響で大切なお子さまの就職活動への不安に駆られる保証人の方も多いようです。しかし、全体の求人倍率はかつてのバブル崩壊やリーマンショックと比較してもまだ余裕があり、むしろ、採用数を増やしている業界・企業も多数あります。過度に悲観的になる必要はありません。

保証人の皆さまにお願いしたいことは、厳しい就職活動に向き合うお子さまの力を信じていただきたいということです。現在の就職活動(特にコロナ以降)は激しく変化する社会状況とシンクロして刻々と形態を変えており、保証人世代の就職活動の経験が必ずしも通用しません。

With コロナの中、厳しい就職活動に対して懸命に向き合っているお子さま自身の意志を尊重していただきたいと思います。その上で、やはり就職活動の原点となりますのは、挨拶をしっかりと交わす、約束の時間を守るといった基本的なマナーや社会性です。家族の絆を大切にすることはお子さまの就職活動を温かく応援することにつながります。

最後に、民間の就活塾や知られていない就職サイトが驚くほど増え、そのレベルも様々で最終的にはビジネスにつながっています。愛するお子さまが就活ハラスメントなどのトラブルに巻き込まれないとも限りません。安心・安全な就職活動に向けて本学の進路・就職センター(青山キャンパス)や進路・就職課(相模原キャンパス)を積極的にご活用ください。

進路・就職センターは、「就職」だけを支援する部署ではありません。青学生らしい、健全な学生生活があってこそ、出口の就職につながっていきます。3年生、4年生への支援はもちろんですが、将来の「進路」を考える上で、1年生、2年生に対しても来室しやすい体制を目指していきます。

安心で安全な就職活動のためにも、進路・就職センターをご活用ください!

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