特集 2

AOYAMA GAKUIN
GLOBAL WEEK
開催報告

国際社会とSDGs*に関係する活動・教育・研究を可視化した、本学初の取り組み

青山学院は、国際化に関する教育・研究活動について創立以来継続的に取り組んでいますが、2021年度はそれらを可視化する初の取り組み「Aoyama Gakuin Global Week」を青山・相模原の両キャンパスおよびオンラインにて開催しました。(開催日:2021年9月23日(木・祝)~10月9日(土))。「一人ひとりが国際的な理解を高め、愛と奉仕の精神を持ってすべての人と社会のために、より公正、より平和、より持続可能な未来を目指すウィーク」を目標に、幼稚園から大学、各研究所、校友等まで学院が一体となって参加したAGGWの取り組みについて報告いたします。

AOYAMA GAKUIN GLOBAL WEEK(AGGW)開催の背景と意義

青山学院副院長、大学宗教主任、文学部 教授、学院宣教師

シュー 土戸 ポール(Paul Tsuchido Shew)

アーラム大学 日本研究専攻卒業後、ハーバード大学 神学研究科修士課程を経て、フラー神学大学Ph.D.。ボストンとロサンゼルスの合同メソジスト教会牧師、日本基督教団大森めぐみ教会協力牧師、ならびに聖学院大学 総合研究所専任講師を歴任。2004年より現職。日本基督教学会、日本キリスト教教育学会、アメリカ宗教学会に所属。

青山学院は建学の精神や教育方針にのっとり、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標SDGsが提唱される前から、SDGs17の国際目標と志を同じくするような多くの活動を伝統的に行ってきました。

AGGWとは、本学院の国際化に関する活動を学内で再確認し、また学外へ発信するウィークです。特に、さまざまな活動を「可視化」することで、その価値や意義が理解しやすくなります。そしてこれまでは活動に関わってこなかった人たちも「自分もやってみよう」と積極的に活動に参加できるようになります。SDGsと国際化に関する活動をよりいっそう推し進めることを目指すのが、今回のAGGWの柱なのです。

私たちは、AGGWの目的について「一人ひとりが国際的な理解を高め、愛と奉仕の精神をもってすべての人と社会のために、より公正、より平和、より持続可能な未来を目指すウィーク」というシンプルな一文にまとめました。この文章の前半は、本学院の教育方針から、後半は国連によるSDGsの説明文から採ったものです。キリスト教の教えと国際教育に根ざした本学院の歩み、そしてSDGsの精神は切っても切り離せません。国際性とSDGsの両方を重視するという点が青山学院らしさであり、今年度のAGGWの一番の特長だと考えています。

*SDGs……持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものです。(外務省ウェブサイト JAPAN SDGs Action Platform より引用)

「一人ひとりの国際精神とSDGs活動が輝く」をテーマに掲げたポスターを作成

期間中はさまざまな団体による多様なイベントが開催されました。その中で特に私の印象に残ったのは、学生たちによる世界のための祈りのメッセージを集めた「Prayer Wall」という企画です。青山キャンパス大学17号館と相模原キャンパスのウェスレー・チャペルに設置されたPrayer Wallのパネルを私は毎日のように見に行っていましたが、そこではいつも学生たちが新しいメッセージを書き込んだり、他の人のメッセージを読んだりしている姿が見られました。そして参加した学生たちからは「世界について考える良い機会になった。このような機会が与えられたことがとても嬉しい」「来年もぜひ参加したい」という声が多く寄せられました。ボランティア団体をはじめとした各学生団体なども、AGGWへの参加を通じて多くの人と出会い、活動の幅をさらに広げることができたようです。

大学礼拝についても特別な試みが行われました。通常、礼拝のテーマは毎回異なるのですが、AGGWの期間中は「SDGsに関する具体的な問題や課題を聖書の教えから考える」を集中的にテーマとして大学宗教主任が礼拝を行いました。これによって学生たちは倫理やさまざまな国際的な課題などについて積極的に考えることができました。

世界のための祈りを皆で共有できるようにと、「Prayer Wall」を、青山キャンパス大学17号館入り口に設置

また、総合研究所や青山学院大学附置スクーンメーカー記念ジェンダー研究センターもトークイベントやフォーラムを開催し、卒業生を対象とした組織である校友会の参加者からは「青山学院全体が一体となって学びや体験を共有する機会を得られ、非常に良かった」というフィードバックをいただきました。

今回のAGGWでは新型コロナウイルス感染症の影響で、多くのイベントがオンライン開催となり、また留学生の参加はほぼありませんでしたが、次回以降は対面型でのイベント開催を増やし、留学生にも積極的に関わっていただけるよう検討していきます。また学生が中心メンバーとなる実行委員会も立ち上げ、学生主体で運営し、さらに国際性豊かなイベントにしていきたいと思います。

新型コロナの影響は大きく、国際的な活動にもさまざまな制限が生じています。しかしそういった今だからこそ、私たちはさらに国際化に向けた活動を強化して、取り組む必要があります。パンデミックだからと言って内側だけにとどまっていて良いということはないのです。世界には戦争、飢餓、気候変動といった地球規模の大きな問題が起きています。これらを各国で協力して解決しようと打ち出されたのがSDGsであり、グローバルな観点から問題解決に取り組むことが重要です。そうした人材を育むのが青山学院のミッションだと私は考えていますし、AGGWを通して少しでも貢献できればと思います。

学生の皆さんの中には、コロナ禍で、さまざまな意味で「外を向く」ことを諦めてしまっている人もいるかと思います。留学や国際交流などもそのひとつではないでしょうか。ですが本学に入学したからには、外を向くこと、行動することを絶対に諦めないでほしいと思います。そのチャンスはこれからきっと開けてくるはずです。こういった現在だからこそ、これからも一緒にSDGsと国際化を推進していきましょう。

9/23(木・祝)にオンラインで開催された第28回青山学院大学同窓祭の「SDGsトークイベント」には、本学の卒業生であるワイス貴代氏、播野由史明氏、荒木重雄氏、関敬之氏が登壇。シュー副院長はモデレーターを務めた

大学としての振り返り、大学としてのこれから

青山学院大学 副学長(広報及び国際連携担当)、国際政治経済学部 教授

内田 達也

青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科 国際経済学専攻一貫制博士課程修了。博士(国際経済学)(青山学院大学)。1995年、本学国際政治経済学部に就任。国際経済学科主任、国際政治経済学部長・大学院国際政治経済学研究科長を歴任。日本経済学会、The Regional Science Association International、日本地域学会に所属。

新型コロナの影響を受け、AGGWの開催にあたってはさまざまな制約が生じましたが、それでもオンラインなどを活用して多くの学生や団体が積極的に参加してくれました。大学からは19の企画の参加があり、多くの参加者があったことを嬉しく思っています。

まず各研究所が主催したイベントとしては、総合研究所主催による「SDGsフォーラム」が挙げられます。環境マンガ家であり、国連WFP協会の理事を務められる本田亮氏をお招きし、「SDGsって、本当は何?」をテーマに講演していただくとともに青山学院高等部と中等部の生徒との意見交換会を行ったものです。またガウチャーホールでは「本田亮 SDGs ユーモアイラスト展」としてSDGs の17の目標を描いた楽しいイラストを展示し、多くの来場者の方にご覧いただきました。

また、今年設立された「青山学院大学附置スクーンメーカー記念ジェンダー研究センター」は、「『アジアで花咲け!』今とこれから」をテーマにオンラインイベントを実施しました。アジアで起業した経験をもとに、現在もグローバルに活躍されている女性として、本学卒業生の篠田ちひろ氏(クルクメールボタニカル社代表)、藤井悠夏氏(株式会社aMi代表取締役CEO)のお2人に登壇いただいたトークショーには113人が参加されました。

AGGWイベントカレンダー | 大学
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「SDGsって、本当は何?」をテーマに開催された「SDGsフォーラム」


「本田亮SDGsユーモアイラスト展」では、SDGs の17の目標を描いた楽しいイラストを展示

イベントカレンダー | 大学
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次に、正課科目の一例として、AGGW期間中に国際政治経済学部国際政治学科の藤重博美准教授のゼミナールでは、「SDGsとグローバル・ガバナンス」というテーマで、学生が英語で発表し、議論を展開しています。また同学科の田中(坂部)有佳子助教は、青山スタンダード科目の「フレッシャーズ・セミナー」の一枠で、「SDGs達成へのアクション(英語講義)」と題した授業を行っています。

学生団体も多数のイベントを主催しました。国際政治経済学部の公認団体「SANDS」は2021年10月6日(水)に「知ろう!話そう!フードロス 飢餓ゼロトークショー~青学生×オイシックス×国連WFP~」としてオンラインでのトークショーを開催しました。これは食品宅配会社「オイシックス・ラ・大地株式会社」専門役員の奥谷孝司氏と本学卒業生で国連WFP民間連携担当マネージャーの大室直子氏をお招きし、飢餓やフードロスについて、また国際的なキャリア構築などについて語っていただいたものです。こちらも参加者は50人を超え盛況でした。

また「青山学院大学公認SHANTISHANTI国際ボランティア愛好会」は「アップサイクル・海洋プラで作るアクセサリー」というオンラインイベントを行いました。学生自身による海洋プラスチックを用いた手作りアクセサリーをインスタグラムも活用して専用サイトで販売した取り組みは、SNSでも話題になりました。海洋プラスチック問題に対して、身近な視点で多くの方に関心を持ってもらえるようにと企画されました。アクセサリーは完売し、売上金はすべて海洋ごみ問題に取り組む「一般社団法人JEAN」に寄付されました。

本学の国際性を象徴するイベントとしては「チャットルーム」が挙げられます。チャットルームとは、留学生を中心とした「チャットリーダー」を中心に、初等部から大学院までの在校生が外国語によるコミュニケーションを行って楽しく国際交流を深める場です。AGGWの期間中、チャットルームではSDGsをテーマとしたセッションを開催し、オンラインで約100人が参加しました。また、本学の協定校であり、大学全体でSDGsに取り組んでいることで有名なオーストラリアのウーロンゴン大学とは、同大学の学生の皆さんに現地からチャットリーダーとして参加していただいた「ウーロンゴン大学セッション」にて、交流を深めることができました。

国際政治経済学部の公認団体「SANDS」は「知ろう!話そう!フードロス 飢餓ゼロトークショー~青学生×オイシックス×国連WFP~」と題し、オンライントークショーを開催


「青山学院大学公認SHANTISHANTI国際ボランティア愛好会」のメンバーは、海洋プラスチックでアクセサリーを手作り

AGGWの輪は校友にも広がりました。第28回青山学院大学同窓祭における「SDGsトークイベント」では、本学の卒業生であるエア・カナダのワイス貴代氏、株式会社サーフビバレッジの播野由史明氏、株式会社スポーツマーケティングラボラトリーの荒木重雄氏、株式会社セブン&アイ・ホールディングスの関敬之氏に、パネリストとして登壇いただき、青山学院副院長・宗教主任のシュー 土戸 ポール先生がモデレーターを務めました。オンラインで視聴参加した校友からは「AGGWを機に、卒業生の立場からも青山学院の取り組みに一体となって参加できる場が得られて良かった」という声が寄せられました。

今年度は新型コロナの影響によって学生の活動の幅や国際交流の機会も限られました。しかし次回以降のAGGWは、実行委員会への参加も含めてさらに学生主体の活動にしていきたいと考えています。国際化推進のため、留学生や外国の方々と直接コミュニケーションを図れるようなイベントも充実させていく予定です。開催に関しては今後も工夫を重ね、AGGWが「私たち一人ひとりが、どこにいてもグローバル社会の一員であると実感できる」ようなウィークとなることを願っています。