建学の精神を伝承する
「青山学院ミュージアム」
を開館
2025.6.19

豊富な資料でたどる
青山学院の一五〇年
2025年5月8日、青山学院創立150周年記念事業の一環として「青山学院ミュージアム」を開館しました。青山キャンパス間島記念館内に設けられたミュージアムには、建学の精神を今に伝える貴重な実物資料からタッチ式のデジタルアーカイブまで多彩な資料が展示されており、150年間の歩みを体感できます。
館長インタビュー
青山学院ミュージアム館長
青山学院史研究所所長
文学部長
文学部 史学科 教授
小林 和幸
青山学院大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程満期退学。博士(歴史学)(青山学院大学)。同大学文学部助手、宮内庁書陵部主任研究官、駒澤大学文学部助教授などを経て、2006年4月青山学院大学文学部史学科教授に着任し、現在に至る。2021年4月、青山学院大学青山学院史研究所所長に就任。主な著作に、『明治立憲政治と貴族院』(吉川弘文館、2002年)、『「国民主義」の時代 明治日本を支えた人々』(角川選書、2017年)など。

■ 建学の精神を伝える「青山学院ミュージアム」と『青山学院一五〇年史』
青山学院ミュージアムでは、黎明期から150年以上にわたる青山学院の歴史に関する資料のほか、日本の近世・近代のキリスト教に関する資料などを公開・展示しています。当時の息遣いを伝える実物資料から歴代の校舎のミニチュア、映像資料やデジタルアーカイブなどによって、さまざまな角度から青山学院の歴史を知ることができます。
青山学院は、震災や戦災など、いかなる苦難にあってもキリスト教信仰にもとづく教育を守り続けてきました。その歴史を知り、建学の精神を再確認することは、今後の新しい歩みの礎にもなるはずです。スクール・モットーである「地の塩、世の光」を体現した先人の歩みや業績を目の当たりにすることで、来館者の方々も自らサーバント・リーダーを目指すための手掛かりとしていただけるのではないでしょうか。さらに、青山学院の創設に関わった人々の足跡は日本近現代史においても重要な位置を占めています。本学の歴史を学ぶとともに、日本近現代の政治や外交史、国内におけるキリスト教史などに関する学びもより豊かなものとなることでしょう。
ミュージアム開設の基盤となったのが、書籍『青山学院一五〇年史』です。その編纂実務は青山学院大学青山学院史研究所が担いました。この研究所は、旧資料センターに置かれた「青山学院一五〇年史編纂室」が基盤となったものです。『青山学院一五〇年史』は、資料編2冊、通史編2冊、別冊『写真に見る青山学院150年』1冊による全5冊から構成され、青山学院が創設された明治期から創立150周年に至るまでの歴史を確実な資料に基づいて振り返るものです。『青山学院一五〇年史』の編纂作業を通じて整理された膨大な資料や、大局的かつ詳細な歴史的視点がミュージアムの基盤を支えています。

青山学院ミュージアムは、昭和戦前期に学院の中央図書館として建設された「間島記念館」内に設けられています。この建物は国の登録有形文化財(建造物)であり、これまで旧資料センターも設置されていたことから、青山学院を文化的・歴史的に象徴する建築物と言えます。古い建築物である間島記念館には構造上の制約もあり、スペースの活用についてはさまざまな工夫が必要でした。そのため、各部屋に展示テーマを設けることによって展示内容を明確にし、見学時の没入感も得られるようにしました。なお「ミュージアム(museum)」という英語表記には青山学院が重視してきた国際性への思いも込められています。今後も歴史資料のみにとどまらず、青山学院に関する多彩な文物の収集および公開を進めていきたいと考えています。
青山学院ミュージアムは、本学における「建学の精神の殿堂」となることを目指しています。本学に関わる方々にとってミュージアムが交流の結節点となること、さらに近隣地域や国内外の方々にも広く青山学院を知っていただくきっかけとなることを願っております。
■ 各展示室のご紹介
今から150余年前、キリスト教の伝道と女子教育という志を抱いてアメリカのメソジスト監督教会から派遣された女性宣教師ドーラ・E・スクーンメーカーは、青山学院の3つの源流のひとつである女子小学校の開校を回想して「誠に小さな光でありました」という言葉を残しています。この小さな学校から始まった青山学院の歴史は、スクーンメーカーらがともした信仰の光に導かれて今日に至ります。この「小さな光」という印象的な言葉に基づいて、ミュージアムのデザインコンセプトは「サイレントライト ―静かな光―」としました。はじめは小さかったキリスト教信仰の灯が次第に全国に広がっていったように、このミュージアムでも光が道案内となり各展示が展開されていきます。
① サーバント・リーダー ルーム
青山学院の創立以来、学院の発展に貢献したサーバント・リーダーたちを紹介する展示室です。ここでは、彼らの「愛と奉仕の精神」を表す温かな光が来館者を迎え入れてくれます。間島記念館が本学の初代中央図書館であったことにちなみ、室内は書斎を意識したしつらえとしました。青山学院を導いた人々や歴代の宣教師たちによる自筆の手紙や書類、当時の写真などが展示され、それぞれの人柄までが伝わってきます。こうした資料からは、青山学院の創立時においていかに多くの支援と協力があったのか、そして青山学院のキリスト教教育が日本社会に根付いていくまでにどのような努力があったのかといったことも読み取れます。先人の人生や考え方をたどることで、自らもサーバント・リーダーとして生きるためのヒントが得られることでしょう。
② 間島記念室
間島記念館建設に貢献した校友・間島弟彦を記念するとともに、青山学院の教育を支えてきたキャンパスおよび校舎の変遷を紹介するコーナーです。青山キャンパスの校地・校舎の変遷をコンパクトにまとめた映像のほか、明治・大正期の校舎を再現したミニチュアや、キャンパスの敷地内から発掘された江戸期以来の文化的遺産なども展示されており、建築史や文化史の観点からも楽しみながら学ぶことができます。キャンパスの変遷を通して、多くの困難を乗り越えてさらなる発展を遂げてきた青山学院の歴史を視覚的にたどることができます。
③ ミュージアムシアター
青山学院の歴史を紹介した映像「地に播かれた三粒の種」をミュージアム用に特別編集し、常時上映しています。女子小学校・耕教学舎・美會神学校の3つの学校から始まり、時代の中で紡がれてきた青山学院の歴史が臨場感あふれる映像で伝えられます。青山学院周辺の発展の様子もうかがえます。
④ キリスト教史
青山学院の源流となるメソジスト教会の歴史や、近世日本の禁教時代および近代以降の日本におけるキリスト教の歴史を紹介するコーナーです。禁教期に掲げられた高札、明治期の幻灯機、ラテン語で書かれた15世紀の聖書(レプリカ)といった貴重な資料からは、国内におけるキリスト教信仰の歴史を読み取ることができます。
そして、いかなる時代においても青山学院がキリスト教に基づく教育を堅守し続けてきたことも理解することができます。室内を彩る2枚のステンドグラスは本学の厚木キャンパスにあった「ウェスレーチャペル」から移設されたもので、聖書に登場するシンボル「鷲」と「魚」をモチーフにしています。青色が印象的なステンドグラスからは信仰の尊さや青山学院の黎明期を感じさせる清らかな光が放たれ、来館者を優しく包み込みます。
⑤ コリドールギャラリー
青山学院の歴史を築いてきた先人たちの言葉が闇の中に浮かび上がり、光の通路となって来館者を導きます。学生への励ましや座右の銘といった数々の言葉には重みがあり、来館者も自らの心に響く一言を見つけられるかもしれません。各展示室で見てきた個別の歴史がこのギャラリーで集約され、輝く言葉の数々が道しるべとなって、次の「青山学院の歴史」の展示室へと来館者を導きます。
⑥ 青山学院の歴史
青山学院150年の歴史を一つの流れで紹介する展示室です。150本のキャンドルの灯をイメージした光に導かれるようにして、日本近現代史のなかでの青山学院の歴史が展開していきます。展示は「学院の礎石」「青山の地へ」「大正期の青山学院」「戦争と教育」「青山学院の戦後復興と発展」「学院設置諸学校の発展」という6テーマからなり、3つの学校を源流とする学院創立期から創立150周年に至るまでの青山学院の軌跡を通覧できます。特に青山学院の大きな特長である「キリスト教教育」および「英語教育」に関する資料が充実しており、明治期の英文で書かれた卒業証書などが当時の雰囲気を伝えます。
この展示室で最初に来館者を迎えるのは、かつての神学科の校舎「フィランダー・スミス・ビブリカル・インスティテュート」に設けられていた時計台の鐘(1880年フランス製)です。関東大震災でこの校舎は損壊しましたが、建設当時「時計台の神学校」と呼ばれ青山学院を象徴する建物でした。「バイブル・ウーマン」と呼ばれる女性伝道者の育成に尽力したマチルダ・スペンサー宣教師が本国から持参したオルガン(1861年頃アメリカ製)や、各地で布教活動を行うために工夫された折り畳み式のリードオルガン(1920年頃日本製)もあり、これら2つのオルガンの音色はいつでも試聴できます。また青山学院高等女学部のセーラー服(レプリカ)をよく見ると、袖の部分などが補修されていることが分かります。そこからは戦時下の人々の暮らしぶりが見て取れます。
⑦ 企画展示室
⑧ 多目的ラウンジおよび資料閲覧エリア
建物2階にある多目的ラウンジは明るく開放的な雰囲気です。タッチモニター式のデジタルアーカイブは実際に触れて操作できます。さらに資料閲覧エリアでは、青山学院が収集した貴重な資料も所定の手続きを経て閲覧可能です。青山学院の歴史に関する学内外からの問い合わせにも対応しています。青山学院の黎明期を支えた10名のサーバント・リーダー*をそれぞれA1サイズ1枚に漫画として紹介したパネルを展示しています。これらの作品は、漫画家・岸本斉史氏により描かれ、10名の「想い」が、圧倒的な迫力として漫画のなかに蘇りました。人間味あふれる登場人物が当時の時代背景とともに紹介され、青山学院の生い立ちを辿ることができる貴重な作品となっています。
*ドーラ・E・スクーンメーカー、ジュリアス・ソーパー、ロバート・S・マクレイ、ジョン・F・ガウチャー、津田仙、本多庸一、米山梅吉、間島弟彦、勝田銀次郎、万代順四郎
■ 過去から未来へ ~青山学院ミュージアムの今後~
青山学院ミュージアムではさまざまな取り組みを予定しています。まずは博物館相当施設(指定施設)の認可申請を行い、学芸員資格の取得を目指す学生をサポートします。またミュージアム学芸員らによるガイドツアーやレクチャーも企画しており、将来的には青山学院の各設置学校を中心とした小・中学生向けのコースから大人向けのコースまでを予定しています。ミュージアムグッズの企画・販売も構想中です。また、近隣地域や他大学、海外の施設とも連携して歴史研究や講演活動も行うほか、本ミュージアムにおける研究成果は『青山学院近現代史研究』に発表する予定です。さらに今秋には「青山学院史研究所」との協働にて150年の歴史を踏まえたシンポジウムも予定しています。

なお、本ミュージアムの開設に当たりましては、皆さまからのご寄付やご支援をいただきましたことに心より感謝申し上げます。ご厚志は今後の発展のため有効に活用させていただきます。
青山学院ミュージアムには、さまざまな苦難の中から発展の道を探し出した先人たちの姿があります。暮らしや学びの中で迷いや苦しみが生じたときは、ここで何かヒントが得られるかもしれません。また、保護者の方や本学院に関心を持った受験生の方もミュージアムにお越しいただければ、学院に関する理解の助けになると思います。重厚な外観をもつミュージアムですが、扉を開ければ、そこには誰もが気軽に立ち寄れる温かな空間が広がっています。歴史について学びたいとき、生き方のヒントを得たいとき、その他さまざまな機会に、一人でも多くの方が青山学院ミュージアムに足を運んでくださることを願っています。

利用案内
開館時間 | 月曜〜金曜 / 9:30〜16:30 土曜 / 9:30〜12:30(毎月第3土曜 / 9:30~16:30) ※入館は閉館時間の30分前まで |
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入館料 | 無料 |
Webサイト | https://www.aoyamagakuin.jp/ag-museum |