サービス・ラーニングや社会貢献活動を支える「シビックエンゲージメントセンター」
2026. 1. 22

フィールドで地域の課題と向き合う
社会貢献活動をサポートする
シビックエンゲージメントセンター(以下、CEC)は、学生の社会貢献活動をサポートする拠点として情報発信などを行っています。また、「サービス・ラーニング」や社会貢献について、正課の青山スタンダード科目の授業を通して学ぶことが可能です。このような本学での「サービス・ラーニング」の授業や社会貢献活動について、青山キャンパスと相模原キャンパスのCECを利用している学生たちと教員が語り合いました。
CECの取り組み・活動報告・アピール
シビックエンゲージメントセンター長
河見 誠
早稲田大学法学部卒業。上智大学大学院法学研究科法律学専攻博士後期課程単位取得後退学。博士(学術)。
専門は法哲学、生命倫理。青山学院女子短期大学教授を経て現在、青山学院大学コミュニティ人間科学部教授。
2025年4月よりシビックエンゲージメントセンター長に就任。
<発足の経緯>
CECは2025年に開設3周年を迎えました。その原点は、2011年の東日本大震災発生を機に、学生たちが集結して発足させたボランティアステーションです。それが発展して2016年には青山キャンパスに、2018年には相模原キャンパスにボランティアセンターが開設されました。
開設にあたり、ボランティアセンターのボランティア活動支援は、「サービス・ラーニング」(仕える姿勢を学ぶ)としての支援と位置づけられました。青山学院創立140周年を受けて2015年に宣言されたAOYAMA VISIONにおいて、「サーバント・リーダーの育成」が青山学院全体の目標に掲げられたことに基づきます。そこで、青山学院大学のカリキュラムにおける「サービス・ラーニング」関連科目の開発と実施協力もまた、ボランティアセンターの柱となっていきます。
CECの原点となったボランティアステーション
<CECのミッション> 青山学院大学シビックエンゲージメントセンター | 青山学院大学
そのような経緯のもと、2022年にボランティアセンターを改組してCECが誕生し、次の3つのミッションを掲げて新たなスタートを切ることになりました。
①大学と社会の繋がりをつくる
②より良い社会をつくっていく
③社会から学び、自分の力へ
Civic Engagementという言葉は「市民協働」と訳すことができます。CECは大学と社会が積極的に「協働」していく基地となり、そのなかで学生をはじめ活動に関わる者たちが「市民」としての「サーバント・リーダー」に成長していくことを目指して改組し始動したのです。
シビックエンゲージメントセンターが始動 | AGU NEWS
<CECの特長>
それ故、CECでは、ボランティア活動を「社会との繋がり」の中にあるものと位置づけて支援しています。例えば、それまでのボランティア助成制度(通称「ボラサポ」)は、「ボランティア・社会貢献プロジェクト・サポート制度」となりました。そこでは「社会貢献」の観点でボランティア活動に取り組むことを求めています。また、「市民協働」の射程は広く、ソーシャルビジネスやプロボノ活動(職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動)へと学生をつなぐプログラムも始まっています。
◆市民協働プロジェクト
また、CECに改組したことで、独自に市民協働プロジェクトを立ち上げ、「よりよい社会をつくっていく」働きに取り組み始めました。2025年現在、商店街のコミュニティスペースで学生たちが地域づくりに参画させていただく「笹塚プロジェクト」(一般社団法人TEN-SHIPアソシエーションとの協働)、学生目線で地域の魅力を発掘し発信する「相模原市中央区地域活性化プロジェクト『わかば』」(相模原市中央区との協働)、特区認定により市内で栽培醸造されることになったワインのラベルをデザインするなど地域活性化の発信を行う「相模原ワインプロジェクト」(相模原市中央区、ケントワイナリーとの協働)、芸術のまち・都心に一番近い里山として知られる相模原市緑区藤野地域で学生たちが里山体験活動と園芸市での活動を展開する「藤野プロジェクト」(しのばら園芸市実行委員会、藤野観光協会との協働)の4つのプロジェクトを始動しています。
「笹塚プロジェクト」メンバーが開催した「青野菜カフェ」
◆正課科目での学びと実践 正課科目での学びと実践 | 青山学院大学
CECは発足と同時に、2022年度から、青山スタンダード科目として「ボランティア・市民協働論」を開講しました。毎年、数多くの学生が履修しており、サーバント・リーダーとしての市民協働とはどういうものであるかを学んでいます。また2024年度からは、社会情報学部から引き継ぎ発展させる形で、「地方行政を通して相模原を知る」という科目をセンターが担っており、多くの学生が学んでいます。
これらに対し、「サービス・ラーニング」関連科目では少人数で、NGO・NPO・ソーシャルビジネスの活動に触れ、実践の中から社会と人に仕えるサービスの姿勢を体得する授業が行われています。内容は、外国につながる子どもたちの支援、カンボジアやフィリピンでの海外実習などへと広がって、多岐にわたるものになっています。2025年度サービス・ラーニングを冠した科目は、青山キャンパスで5科目、相模原キャンパスで2科目開講され、「社会から学び、自分の力へ」と結実させていく教育の充実に取り組んでいます。
「サービス・ラーニングⅢ」(カンボジアのフリースクールにて、日本文化紹介の授業)
<青山学院全体に広がる協働の取り組み>
CECは大学生のみならず、「青山学院の生徒、児童、園児、そして教職員」も支援するセンターです。幼稚園から大学まで、青山学院全体に開かれたセンターとして、新しい動きも生まれています。例えば、包括連携協定を結んでいる岩手県宮古市では、東日本大震災発生後、幼稚園、初等部、中等部、高等部、大学、卒業生が今でも交流活動を続けていますが、これまで、その豊かな活動と成果をお互いに共有し語り合う機会はありませんでした。そこで2025年11月29日に、「青山学院×宮古市 交流活動発表会 ~青山×宮古day~」をセンター企画で開催しました。学院内での連携・協働をもとにした、青山学院全体としての市民協働もまた始まっています。
青山学院大学は中長期目標の一つとして「社会課題の解決に向けた地域と一体化した開かれたコミュニティの構築」を掲げています。その拠点として、CECはこれから更に前に進んでいきます。
サステナビリティレポート2025 中長期計画概念図 | 青山学院大学
【青山キャンパス】コーディネーター × 学生 鼎談
《写真左から》
国際政治経済学部
国際政治学科 2年
(サービス・ラーニング科目受講者)
東京・私立青山学院高等部出身
柴田 匠
法学部
ヒューマンライツ学科 2年
(学生団体SEEDs所属)
東京・私立青山学院高等部出身
中島 柚香
助教
コーディネーター
秋元 みどり
■「世界を知りたい」が活動のきっかけ
秋元 大学生が社会と関わる方法はボランティアだけではなく、授業やインターンシップでの関わりなど、とても多様になっています。CECでは、そのようなさまざまな形態や分野での学生の活動をサポートしています。また、本学では「青山スタンダード科目」である「サービス・ラーニング」において、ボランティア活動や社会貢献について学び、フィールドで実践する活動を行っています。柴田さんと中島さんも精力的に活動していますね。
柴田 私は小・中学生時代を中国の上海で過ごした経験から、日本と海外の違いや貧困の問題などに興味を持ちはじめました。大学に入学したらボランティア活動をしたいと思っていましたので、友人とCECに行き、初めて参加したのがフィリピンのスタディツアーでした。2年次には、「サービス・ラーニングとしてのボランティア活動」という授業で外国につながる子どもたちの勉強のサポートなどを行なうプログラムに参加しました。また、国際政治経済学部の公認団体であるSANDSでは2030年のSDGs達成のために大学生ができることを考え、実践する活動をしていまして、その中でマイボトルの普及を促し環境コストの削減に取り組むマイボトルプロジェクトのプロジェクト長をしています。
中島 私が初めて社会問題に触れたのは、小学5年生のときにフィリピン訪問プログラムに参加したときでした。フィリピンで現地の状況を見て、それまで想像していた貧困の姿と違い、人々が明るい様子だったことに驚いたのです。その経験をきっかけに、もっとフィリピンや貧困問題に関わりたいと思うようになりました。高校生のときにはフィリピンプロジェクトという学生団体を立ち上げ、再度フィリピンを訪問して現地の支援活動を間近に見る機会に恵まれました。大学生になってもこのような活動を続けようと思っていたので、自分たちでSEEDsというボランティアサークルを立ち上げました。この団体では国内外すべてに対象地域を広げて、「子ども支援」というテーマで学びながら活動しています。
秋元 実際の社会課題に触れて、その課題に対する見方や考え方は変化しましたか。
柴田 サービス・ラーニングの実習先では、両親のどちらか一方もしくは両方が外国出身の子どもたちと関わる活動だったので、日本語の理解が十分でないゆえの学習支援が主な課題だと考えていました。しかし、実際に子どもたちと関わると、言語の壁だけが課題ではないことに気付きました。そうした体験を通して、第三者には見えにくい課題があることや、多様な背景を持つ子どもたちの複雑な状況を理解する必要があると感じました。
中島 小学生のときに参加したフィリピン訪問プロジェクトでは、現地の支援団体による子どもたちへのサポートが行き届いていたこともあり、子どもたちは皆明るく、将来の夢を語る姿も生き生きとしていて、むしろ日本の子どもたちよりも前向きに見えました。そのときに初めて貧しさとはお金の問題だけではなく、心のあり方にも関係するのだと気付き、子どもへの心の支援に興味を持つようになりました。その後も中学・高校を通してフィリピン支援活動を続ける中で、「本当に必要な支援とは何だろう」と考えるようになりました。大学では日本の子どもたちの現状を知りたいと思い、都庁のインターンシップで児童自立支援施設に関わったり、本学法学部の授業で非行に走る子どもについて学んだりしています。そのようにして実際に関わる中で、子どもたちが抱える問題や課題の背景には家庭環境や障がいの特性、貧困など、さまざまな要因が複雑に関わっていることを実感しています。
■「サービス・ラーニング」で学びを深める
秋元 二人は活動を通じて物事を多角的に捉える大切な視点を養うことができましたが、単発のボランティア活動に参加するだけでは、地域課題の背景や行政、市民活動団体の取り組みを理解し、活動が地域にもたらすことまで深く考えることは困難なことが多いです。本学のサービス・ラーニング科目では、学生自身がそれぞれの社会とのつながりを考え、生涯を通じた学びにつながることを意識できるような経験的な学修の枠組みを実践しています。文献やデータなどから地域の問題を理解する授業や地域で活動されている方から直接話を聞く事前学習、現地での活動経験、さらに活動後の振り返りを通した批判的な考察までを、授業の範囲で行うことができるのです。
柴田 私は新宿区にある「特定非営利活動法人 みんなのおうち」の活動に参加して、外国につながる小学生から高校生の宿題やテスト勉強のサポートをしたり、ときには一緒にカードゲームなどをしたりして過ごしました。事前学習では外国につながる子どもたちについてマクロ的な視点で学び、「みんなのおうち」の方からも直接お話を伺いました。その上で子どもたち一人ひとりと関わってみると、数字には表れない特性や課題が見えてきて、事前学習から実習、事後の振り返りまでのつながりの大切さを感じました。
秋元 それは良かったです。柴田さんが実習中に記録していたジャーナルから、子どもたちに真摯に向き合う様子が伝わってきましたよ。
柴田さんが記録したサービス・ラーニングでのジャーナル。実習先での活動や見聞きしたこと、気付きなどが丁寧に記録されている
秋元 他のサービス・ラーニング科目として、渋谷区社会福祉協議会が実施している「渋谷区こどもテーブル」という地域の子どもたちを支援する活動のほか、今度中島さんが参加するカンボジアやフィリピンでのプログラムなどもあります。
中島 私が参加するのは、カンボジアで孤児院やフリースクールを運営している認定NPO法人グローブジャングルを訪問するプログラムです。今は事前学習としてNPOの方にレクチャーをしてもらったり、現地を訪問した経験のある先輩の話を伺ったりして、カンボジアの状況などを学習しています。
秋元 海外での活動については、現地での学びを重視している一方で、国外に出てみることで日本の課題や自分のポジショナリティに気付くことが大切だと考えています。日本では実感しにくいことですが、海外に出て初めて大学生として教育を受けられている環境や日本にある課題を意識することがあるはずです。そのような体感を通してグローバルな視野を広げていくことを期待しています。
柴田 私は、サービス・ラーニングでの現場体験が、学部での学びを発展させてくれたと感じています。「開発経済学入門Ⅰ」の授業で、ある種の専門性・技能を有していて即戦力となる外国人材を労働者として受け入れるための在留資格(特定技能)について学んだことがあります。労働生産人口が減少する日本においては人手不足解消のために外国人労働者の受け入れが進むことになりますが、そうなれば、いずれ日本で暮らす海外にルーツを持つ子どもについての課題とサポートについても考える必要が出てきます。このように、コミュニティーの現場での実習を通して、「外国につながる子ども」と「人手不足と外国人労働者」といった2つの課題をつなげて考えることができました。
■ 少しでも興味があれば、一歩踏み出してみる
秋元 シビックエンゲージメントに関わる活動をしている学生は比較的少ないと思いますが、青学には柴田さんと中島さんのように自らテーマを見つけて主体的に行動できる学生が多いと感じています。活動を通じて自分自身の中にどのような気づきや変化が生まれたと感じていますか。
柴田 コミュニケーションや傾聴力を含む「他者理解の力」なのかなと思います。外国につながる子どもたちの活動でも、子ども一人ひとりの目線に立ち、何気ない学校生活や休みの過ごし方を聞いてみたり、相手の文化に興味を持って質問してみたり教えてもらったりすることで信頼関係を構築していきました。こうした活動が、問題を本質的に理解する一歩につながったと思います。
中島 私が一番成長したと感じるのは「行動力」です。高校までの活動は、先生のサポートによってスムーズに実現できていましたが、大学では企画も連絡も調整も、すべて自分たちでやらなければなりませんでした。それは思っていた以上に大変で、うまくいかないことの連続でしたが、そこから「うまくいかなくても、自分で動き続けないと何も始まらない」と意識が変わっていきました。今では、臆せず、うまくいかなくてもめげずに、自分から積極的にアプローチできるようになってきたと思います。
秋元 青山学院大学では、ボランティア活動やさまざまな形での社会とのつながりを通して生まれた問題意識を、サービス・ラーニングによって多角的に深めることができますし、CECでは、サービス・ラーニングや学部の授業で得た知識をコミュニティーの現場の実践に生かすためのサポートもあります。とはいえ、行動に移すことに難しさを感じている学生も多くいます。二人からアドバイスをお願いします。
柴田 「何か社会貢献をしたいな」と思っていても、実際に行動へ移すことにハードルを感じる人も少なくないのではないかと思います。友だちと一緒でも良いので、はじめの一歩としてCECに行ってみるのもいいと思います。CECでコーディネーターの方と会話をしてみることで、自分がやりたいことに気づいたり、実際の活動内容までイメージしたりすることができました。また、青山学院大学を目指す高校生で、少しでも「大学で社会貢献活動をしてみようかな」と思っているなら、ぜひ早いうちからやってみることをおすすめします。実際に活動してみると、授業やニュースで見聞きするのとは異なる視点で物事を考えられるようになりますし、大学生はこれまでよりも社会活動ができる機会があると思います。ぜひ、興味があればチャレンジしてみてください。
中島 私も、少しでも興味がわくことがあれば、ぜひやってみてほしいです。支援が必要な現場に直接関われる活動だと、自分の視野が大きく広がるきっかけになり、社会への理解も深まると思います。私自身も、小学生のときにフィリピン訪問プログラムに参加するまでは、このような活動に特に興味はありませんでした。でも、実際に現場で子どもたちと関わる中で新しい視点を知り、その経験が今の自分の考え方やSEEDsでの活動、そして進路に大きな影響を与えました。社会貢献活動は、自分でも思いがけない方向に興味が向くきっかけになったり、「やりたいこと」を見つけて「できる」という自信を育む経験にもなったりします。とにかく、まずは一歩を踏み出してみることをおすすめします。
SEEDsのワークショップにて。法学部・国際政治経済学部のメンバーを中心に活動中
秋元 大学では、学生と教員は教わる側と教える側という関係が固定化しがちですが、地域社会と関わって何かを実践していく際には、お互いに教え合い、学び合う立場になります。こうした活動では、年齢や立場、ジェンダーなどを超えたところで共感したり、刺激を受けながら、互恵的な関係を育んでいけることが魅力です。二人にもぜひ自分たちのオリジナルな活動を今後もつくり上げていってほしいと思います。
【相模原キャンパス】コーディネーター × 学生 鼎談
《写真左から》
助教
コーディネーター
三神 憲一
コミュニティ人間科学部
コミュニティ人間科学科 3年
(藤野プロジェクト)
青森県立八戸高等学校出身
佐々木 歩里
コミュニティ人間科学部
コミュニティ人間科学科 4年
(藤野プロジェクト)
富山県立富山中部高等学校出身
冬木 大悟
■ 里山で活動する「藤野プロジェクト」
三神 相模原キャンパスのCECでは、神奈川県相模原市という地域の特性を活かしたプロジェクトを展開しています。その代表といえるのが、「芸術のまち」「都心に一番近い里山」とも呼ばれる相模原市緑区藤野(旧津久井郡藤野町)での「藤野プロジェクト」です。本プロジェクトでは、「藤野里山体験ツアー」に参加して里山での暮らしを体験したり、「しのばら園芸市」という地域に根差したイベントの開催に向けた準備や当日の運営を行ったりしてきました。冬木さんと佐々木さんはどのような経緯で藤野プロジェクトに参加したのですか。
冬木 入学当時からCECの活動を一緒にやろうと熱心に誘ってくれる友人がいたのですが、自分にはボランティア活動なんて向いていないような気がしたので、ずっと断り続けていました。手軽なスポーツサークルならまだしも、ボランティア活動はもっと意識が高い学生がするものだと思っていましたから。しかし、2年次の夏に藤野地区で地域活性化ボランティアを募集しているという話を聞いて、中山間地域での活動ならやってみたいと思い、参加することにしました。参加する前は藤野がどこにあるかも知らず、山のイメージだけを浮かべていました。
佐々木 私は1年次にCECの「相模原市中央区魅力発掘・創造・発信プロジェクト(愛称:わかば)」(現 相模原市中央区地域活性化プロジェクト「わかば」)に参加していました。わかばプロジェクトは、キャンパスのある相模原市中央区の魅力を見つけて発信する活動で、私は相模原市中央区で生産されたワインをPRする活動を行っていました。その活動も充実していたのですが、2年次になったら新しい活動に挑戦したいと思いまして、藤野プロジェクトに参加することにしました。私は青森県出身ということもあり、緑豊かな土地での活動が魅力に感じられました。加えて、神奈川県の里山地域の特徴にも興味があり、地方における里山地域と比較してみたいと思いました。参加する前の藤野のイメージは、里山地域といっても神奈川県ですし、もう少し交通機関も整っていて、スーパーマーケットやコンビニもあるものだと思っていましたが、実際は遠くにある里山で驚きました。
三神 藤野プロジェクトは、「地域のニーズ」と「学生が魅力的に感じる活動内容」の両立を重視したプロジェクトになっています。二人は藤野でどのような活動をしたのですか。
冬木 私はボランティア活動をしようという思いよりも、まず山に入って動いてみようという気持ちでした。もともと山が好きで、初めて訪れたときに藤野の豊かな自然に触れて、空気の良さを感じ、ここで活動したいと思えたのです。「しのばら園芸市」の会場となる場所に生い茂った竹を切るところから始めて、草刈りをしたり、園芸市本番が近づいてきたら会場設営や当日販売する小物を作ったりもしました。
三神 「しのばら園芸市」は里山とその周辺に眠っている自然素材の良さを改めて知り、楽しむイベントで、「あるものを生かす」がテーマですから。里山の素材を使って作った竹細工や炭、リースなどを販売しているのですよね。
2025年4月開催のしのばら園芸市にて、2日目に参加した藤野プロジェクトメンバー、しのばら園芸市実行委員会の方々、地域住民の方々、水谷コーディネーター、三神先生との集合写真
佐々木 草刈りや土地ならしなど、普段はしない里山ならではの体験が新鮮でした。ただ、初めて藤野に行ったときの印象は「遠いなあ」でした(笑)。最初は駅まで地域の方が迎えに来てくれて、そこから車で行ったのですが、かなり長い時間車に揺られていた気がします。現地に到着すると草が生い茂っていて、ここでゼロから会場づくりをするということは、表面的な活動ではないのだと気持ちが引き締まったのを覚えています。
■ イベントを通して地域の人と「協働」する
三神 藤野プロジェクトがスタートしたときは、継続的な活動が決まっていたわけではなかったのですが、単発の活動が継続的な関わりへと育っていきました。しかし、受け入れ団体の体制が変わるなど、現在も状況は流動的で、関係づくりは現在進行形という運びです。その変化に対応しながら進めるプロセスこそが、地域と協働することの醍醐味でもあると感じていますが、そうした中で苦労したことはありますか。
冬木 正直なところ、初めて参加したときは地元の方々と私たち学生たちの間に、壁のようなものを感じていました。地元の方々とは準備段階から一緒に作業することが多かったのですが、多くの方から「これは授業に必要な活動?」「この活動が単位になるの?」といったことをたびたび聞かれるのです。取得単位や授業に関係なく完全にボランティア活動であると答えると驚かれることもありました。
佐々木 それは私もよく聞かれました。悪意はないのでしょうが、そう聞かれると距離を感じて少し寂しい気持ちになりました。でも、何回か一緒に活動するうちに顔と名前を覚えてくださって、声を掛けていただけるようになりました。
三神 学生には、地域の課題や課題解決への取り組みを知る・学ぶということに留まらず、“共に考え、行動する仲間”として関わる姿勢を培ってもらいたいと考えていましたが、協働はできていましたか。

2025年4月に開催されたしのばら園芸市にて、佐々木さんが店頭で販売対応
佐々木 園芸市では会場設営や出店という形で参画し、イベントを盛り上げるために協働してきました。NPOの方や地元の皆さんはボランティアを受け入れてくださる側であり、私たち学生はそこに参画させてもらう側という立場の違いはありますが、イベントを成功させたい、藤野の魅力を届けたいという同じ思いで、主体的に活動することが協働になるのだと思っています。園芸市のミーティングのときなどに藤野の方々から「学生さんはどんなことをしたい?」などと率直な意見を求められることもあり、立場を超えたところに協働の特徴があるのだと感じました。
2025年4月に開催されたしのばら園芸市にて、佐々木さんが店頭で販売対応
冬木 多くの青学生は相模原市中央区などの大学キャンパス周辺に住んでいるので、藤野のような中山間地域での生活には触れる機会は少ないと思いますが、藤野プロジェクトによって初めて体験することが本当に多くあります。未知の生活体験、新しいものの考え方、視点などをもたらしてくれるのはやはり体験です。私たちは、体験して、その地域のことを深く知った上で活性化活動に参画するという流れを大切にできていたのではないでしょうか。
三神 やはり地域の文化や人間関係の文脈を理解し、こちらから歩み寄る姿勢が不可欠だと思います。その上で、活動経験をとおして、社会とのつながりをつくることにも関心を寄せてもらい、相互理解を深めながら関係を築いていけるかがとても大切な第一歩ですし、そこに困難を伴うことがあったのでしょう。
■ 自分たちの足跡が後輩たちの活動の道筋となる
三神 相模原のCECでは、藤野プロジェクトのほかにも、佐々木さんが参加したわかばプロジェクトや相模原ワインプロジェクトなど、キャンパスがある相模原市と連携した取り組みを多数実施しています。
佐々木 それは私がボランティア活動をする上で、とても大切にしてきたことです。相模原市にいるのは大学生の4年間に限られていますが、せっかく縁があって住んでいるのですから、ただ大学に通うだけではもったいないと思います。地域活動に参加することで相模原市への興味関心、愛着を持つことができました。
冬木 私も相模原キャンパスにはとても愛着があります。出身が地方なので、自然が多いところが落ち着きますし、そういった意味でも藤野プロジェクトは毎回楽しむことができました。移動に時間がかかるのは大変でしたが、現地に着いて体を動かし始めるとすごく元気が湧いてくるのです。
三神 藤野プロジェクトでは、活動経験を経て、学問領域や特技といった自分の専門性を社会にどのように生かせるかを考える機会にしてもらいたいと思ってきました。二人がこの活動で得たものは何ですか。
冬木 コミュニティ人間科学部の授業では多くの地域活性化についての事例を見てきたので、地域の人とのかかわり方や新しい企画を考えるときに、今まで学んだケーススタディなどを参考にすることができました。逆に、このプロジェクトを通して、仲間と協力して作業を行うことの充実感、イベント成功の達成感や、より積極的な行動力を身に付けることができました。
2025年7月に実施した藤野里山体験ツアーにて、受入宅での敷地で郷土料理のうどんを製麺(中央が冬木さん、右が佐々木さん)
佐々木 コミュニティ人間科学部にはボランティアやNPO団体について学ぶ授業もあるのですが、ボランティアの実体験があることで、理解度や自分の考えが深まりました。私はもともと地域文化継承に興味があり、それを扱っているゼミナール(ゼミ)に所属しているのですが、藤野プロジェクトを通じて、文化だけでなく地域の風土や過去から続く人々の生業など、継承についてさまざまな観点があるのだという発見がありました。
2025年7月に実施した藤野里山体験ツアーにて、受入宅での敷地で郷土料理のうどんを製麺(中央が冬木さん、右が佐々木さん)
三神 総括をすると、地域との協働では信頼関係の積み重ねこそがプロジェクトの持続的な基盤になると思っています。また学生には、自分たちの活動が一代限りではなく、次に続く青学生に引き継いでいくという意識を持ってほしいと思います。自分たちがやっていることが足跡となり、地域の人たちの中にも残っていきますし、これからやってくる青学生や後輩たちはその足跡を辿って活動していくのですから。
冬木 私は就職活動中、地域おこしに関わる仕事も検討しました。結果的には直接関係はない業界に就職することが決まっていますが、藤野プロジェクトは将来の選択肢となるくらい貴重な体験でした。ですから、これから本学に入学する人や後輩にも積極的に行動してほしいと思います。何事も、新しく始めるときというのは少なからず怖さを感じるものですが、一歩踏み出してみると、最初に抱いていた不安感は消えていきました。皆さんも多くの新しい体験ができ、仲間と出会えるはずです。
佐々木 私はいずれ地元・青森県に戻り、地域活性化や文化継承などに貢献したいと考えています。CECでの活動はそういった将来の夢にとっても有意義でしたし、青学のキャンパスがある相模原市の魅力を知るとても良い機会でした。後輩に伝えたいのは、たとえ初めは一人で参加していても、自分がやりたい社会貢献活動に対する熱意や行動が伴っていれば、仲間や支援し合える環境ができるということ。長期的な活動は、大学生という、時間に余裕がある期間にしかできないことだと思うので、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
CECについて
青山学院大学シビックエンゲージメントセンター | 青山学院大学
青山学院大学シビックエンゲージメントセンターは2022年4月に開設しました。
青山学院のスクール・モットーである「地の塩、世の光」を体現する人物、サーバント・リーダーの育成に向け策定されたAOYAMA VISIONに基づき、前身であるボランティアセンターを改組した組織です。2011年の東日本大震災以降、青学生が主体的に展開してきたボランティア活動を発展させつつ正課との接続を強化させ、サーバント・リーダーシップ教育に取り組みます。
【青山キャンパス】
開室期間:夏期および冬期休業期間を除く通年
開室時間:月~金 10:00~11:30
12:30~18:00
所在地:10号館1階
フリースペース定員:20名程度
資機材:
・40インチテレビモニター
・液晶プロジェククター
・iPad
・スピーカーフォン
・ウェブカメラ
・イーゼル(3脚)
・可動式ホワイトボード(3台)
・非接触型体温計
【相模原キャンパス】
開室期間:夏期および冬期休業期間を除く通年
開室時間:月~金 10:00~11:30
12:30~18:00
所在地:F棟2階
フリースペース定員:10名程度
資機材:
・40インチテレビモニター
・液晶プロジェククター
・iPad
・スピーカーフォン
・ウェブカメラ
・イーゼル
・可動式ホワイトボード(2台)
・非接触型体温計
・トランシーバー(4台)
*詳細や最新情報はウェブサイトをご確認ください。
ボランティア活動に従事する学生(AGU LiFE)
● 青学国際子ども食堂 / ゆめどこ / 学生スタッフ
コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間科学科新 亜子
ボランティアで見えてきた地域の課題。
小さなことでも、まずは私が行動に移したい
VIEW DETAILS →
*所属・学年等は取材当時のものです。