AGU NEWS 特集

トップになるため
青学に来た
2024. 06. 20

陸上競技部(長距離ブロック)
太⽥ 蒼⽣選手
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硬式野球部
⻄川 史礁選手

2024年3月14日(木)、2023年度「学生表彰」授与式および「学友会表彰」表彰式を行い、学問および課外活動等において優秀な成績等を収めた学生・団体を表彰しました。
そのうち、2023年度大学日本一に輝き、学友会表彰「最優秀団体」に選ばれた3団体から、青学スポーツを象徴する「陸上競技部(長距離ブロック)」の太田蒼生選手と「硬式野球部」の西川史礁選手にお話を伺いました。お互いに面識はあるものの対話をするのは初めてという両エースによる対談では、トップ・アスリートとして青学で培ったもの、今後の目標について話し合っていただきました。社会から脚光を浴びる「青学スポーツ」の強さのメカニズムを解き明かします。

<2021・2022年度 学友会表彰(体育会表彰)敢闘選手受賞>
<2023年度 学友会表彰(体育会表彰)優秀選手受賞>
コミュニティ人間科学部 コミュニティ人間科学科 4年
陸上競技部(長距離ブロック)

太⽥ 蒼⽣(おおた あおい)

福岡・私立大牟田高等学校出身
中学2年生から陸上競技部で長距離を始める。九州の陸上強豪校・大牟田高等学校を経て、「日本一になるため」本学へ進学し、1年次から3年連続で箱根駅伝に出走。今年1月、3年次の第100回箱根駅伝(3区)では日本人初となる59分台の快走で逆転劇を生み出し、青山学院大学の総合優勝に大きく貢献した。駅伝競技以外でもハーフマラソン大会での優勝など好成績を残している。

太田蒼生選手の活躍
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<2023年度 学友会表彰(体育会表彰)敢闘選手受賞>
法学部 法学科 4年
硬式野球部(外野手)

⻄川 史礁(にしかわ みしょう)

京都・私立龍谷大学付属平安高等学校出身
3歳から野球を始め、兄(青山学院大学硬式野球部元主将 西川藍畝さん)の背中を追って本学に進学、硬式野球部に入部。2023年度(3年次)には東都大学野球一部リーグ戦で青学の春秋連覇の原動力となり、18年ぶりとなる全日本大学選手権優勝や明治神宮大会の準優勝にも貢献。また、同年夏「侍ジャパン」大学代表では四番打者として活躍し、2024年3月には「侍ジャパン」トップチーム代表に大学生として初選出。欧州代表との強化試合で攻守にわたって結果を出し鮮烈な印象を残した。

西川史礁選手の活躍
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※肩書き等は2024年4月現在のもの(以下敬称略)

「名監督」の指導とは?

――硬式野球部の安藤寧則監督、陸上競技部(長距離ブロック)の原晋監督ともに「名監督」と言われています。部員のお二人から見て、それぞれどのような指導者ですか?

西川 私は4つ年上の兄の影響で野球を始めたのですが、私が入学する前年の2020年度に兄が硬式野球部の主将を務めていたこともあって、安藤監督のことや青学チームの雰囲気はよく分かっていました。一言で言えば、監督は部員とのコミュニケーションを重視される方です。野球の技術や練習のやり方について細かく指導するというより、私たち一人一人の考えを尊重し、大人同士として接してくれます。ふだんは穏やかな方ですが野球に対してはとても熱い気持ちを持っていて、高校時代に視察にいらして初対面したときに「この監督の下でなら、自分の野球を追求できる」と思ったことを覚えています。

太田 原監督も学生とのコミュニケーションを重視し、競技に対して「熱い」という点では共通していますね。高校時代に他大学にも誘われましたが、原監督は他の監督とは違い、お話しするだけで刺激をいただける不思議な方でした。私はこうした原監督との出会いもあって「日本一の大学に行きたい!」と青学に進学しました。原監督は強い組織をつくる“経営者”として秀でた方ではないかと今は感じています。「自分に足りないものは何なのか」「目標をどこに定めるのか」――それを学生自らが考えて自律的に実行することを、原監督は選手に求めます。原監督ご自身の長年の経験に基づく戦略立案はもちろんですが、チームの専門家、コーチやトレーナー、ドクターなどのサポートがあってこその「日本一」です。私は、原監督からそうした「チームビルディング」についてのお話を聞くのが好きですし、競技のことに限らず「組織論」という観点からも、とても勉強になります。

西川 原監督はテレビなどのインタビューで、いつも「選手が頑張った」と選手を褒めるコメントをされていますよね。安藤監督も個々の選手を褒めることが多いのですが、監督の褒め言葉は確実に選手のやる気につながってきますよね。

太田 確かに。私は原監督から「キミ、天才かね?」とつぶやかれたこともありました(笑)。スポーツ番組の他に情報系の番組にも出演され、大学教授でもある原監督ですが、どんなに忙しくても私たちの練習はほぼ全て見ています。だから選手のコンディションを常にしっかり把握していいて、やはり組織の統率者としてすごい方ですよ。

先輩と後輩の関係性について

――野球は団体競技ですが、自分で考える「個人」練習にどのように取り組んでいますか?

西川 全体練習も大切ですが、個々の課題を克服するための自主練習は強いチームに欠かせません。私の場合、1・2年次ではバッティングで結果を出すことができませんでした。自分に足りないもの何なのか?それを自分なりに考え続けてスイングの練習量を増やしたり、ウエイトトレーニングに取り組んだりと、試行錯誤を続けていました。課題が見つかったらすぐにその対策に乗り出し、ずっとその繰り返しでした。そしてようやく3年次の春、レフトのポジションで四番打者としてレギュラーの座をつかみ取ることができました。それも選手の自主性を重んじ、私の成長を粘り強く見守ってくださった監督やコーチのおかげです。また、先輩方にもさまざまなアドバイスやサポートをしていただきました。先輩と後輩はチームメイトであると同時にレギュラーを争うライバルでもあるわけですが、硬式野球部には後輩が活動しやすい環境を先輩が率先してつくるという素晴らしい伝統があります。苦しんでいた1・2年次の時、私もこの伝統に助けられましたから、今は後輩たちが力を発揮できるようバックアップしていきたいと思っています。ちなみに、この青学ならではの伝統が受け継がれてきた背景に、部員数の枠が1学年約10人と少なく、チーム全体で部員総数40人程度ということがあげられると思います。一般的に、大学野球の強豪チームは部員100人超というところが多いですが、昨年度優勝した全日本大学野球選手権の参加大学で最も部員が少ない大学が青学です。

太田 堅苦しい上下関係がないのは、陸上競技部(長距離ブロック)も同じです。原監督の持論の一つは「チームに理不尽があってはいけない」ということ。意味のない上下関係をつくらず、頑張った人がしっかり報われるのが青学陸上競技部の素晴らしい点です。企業でも、社員に対して公平にチャンスを与えない組織は決して成長しませんが、それと同じことです。私たちの練習をはたから見てもらっても、誰が先輩で誰が後輩なのか、なかなか区別がつかないと思います。ウォーミングアップ中に部員同士が笑顔でしゃべっている光景は、一般的な体育会ではレアケースかもしれません。

青学のフィットネスセンターでウエイトトレーニングに励む西川選手

――そうした自主性が重視されるチームの中で、学生のリーダーである主将が果たす役割は、どのようなものなのでしょうか。

西川 硬式野球部の場合、年次にかかわらず一緒に頑張ることができる環境づくりだと感じます。私が入学後の歴代主将を見ても、下級生が上級生に意見を言いやすい雰囲気づくりを意識していたのではないかと思います。今年度は同期の佐々木泰(コミュニティ人間科学部4年)が主将ですから、私も後輩たちとのパイプ役になって彼を助けたいと思っています。

太田 昨年度の陸上競技部(長距離ブロック)主将の志貴勇斗さん(Yakult陸上競技部所属)は、第100回箱根駅伝でエントリーメンバー16人に入っていませんでした。それでも自らの使命は「キャプテンとしてチームを箱根で優勝させる」ことと、最後までチームを鼓舞し、サポートし続けた姿は忘れられません。

西川 すごいことですね。今年の箱根駅伝総合優勝は私もテレビで見ていて「自分たちも負けていられない!」と勇気をもらいました。硬式野球部でも4年生が下級生にレギュラーの座を奪われることは珍しくありません。大学最後の年に試合に出られないことは無念だと思うのですが、それでも力いっぱいベンチで声を張り上げ、後輩を励ます4年生の姿に、「チーム全員がグラウンドで一緒に戦っているのだ!」と深い感銘を覚えました。そういう先輩方だからこそ、後輩もついていくのですよね。

青山学院創立150周年、原監督就任20年目、第100回箱根駅伝という「3つの節目」が重なった特別な年に、陸上競技部(長距離ブロック)は2年ぶり7回目の総合優勝を果たした(写真:陸上競技社提供)

太田 2024年度主将の田中悠登(経営学部4年)は、さまざまな新しい試みに取り組もうと張り切っています。

西川 実は田中くんとは英語の授業で一緒だったことがあります。話す機会はなかったのですが、どんな人ですか?

太田 彼は基本的には真面目で何事にもきっちり取り組むタイプですが、ユーモアとコミュニケーション能力も兼ね備えているので、組織のリーダーに向いている人間だと思います。大学卒業後はテレビ局のアナウンサーを目指しているので、将来、私や原監督が彼にインタビューされる日が来るかもしれませんね(笑)。

最終学年に懸ける思いと卒業後の夢

――大学生選手として最終学年を迎えるお二人の今後の目標と抱負を教えてください。

西川 昨シーズンまでの経験や反省から得た学びを生かし、チームとして最高の成果を残すシーズンにしたいです。最低限の目標は「戦国東都」と呼ばれるほど激しい入れ替え戦が行われる東都一部リーグ残留。目指すのは、一部リーグ戦の春秋連覇、全日本大学選手権連覇、そして昨年は準優勝だった明治神宮大会優勝の「四冠」です。卒業後はやはり、子どもの頃からの夢であるプロ野球選手として活躍したいです。ドラフト1位でプロ球団から指名されるよう、個人としても最高の成績を残せるよう練習に励んでいます。3月に侍ジャパン強化試合・欧州代表戦に出場し、攻守で結果を残せたのは大きな自信になりました。ただ、代表チームで一緒だった東京ヤクルトスワローズの村上(宗隆)さんはじめプロの方々の頑強な身体を間近に見て、自分はまだまだと思いました。卒業までにプロで通用する身体づくりもしっかりやりたいと思っています。プロ選手としてできるだけ長くプレーしたいですからね。

太田 最終学年となる今シーズンは、来年1月の箱根駅伝に自分のピークをもってくるよう調整していきたいと思っています。その後はマラソン選手としてオリンピックで金メダルを狙います! 私はこれまで「自分が見たことのない世界」を常に追求していて、「オリンピックで優勝すること」もその一つです。きっと、表彰台に立つのは最高に楽しい経験になると思います。

西川 太田くんは箱根駅伝などの大きな大会で緊張したりしないのですか?

太田 しませんね。というのも私は、普段から自分が勝つ姿ばかりを“妄想”しているからです。本番の大会では「勝つ」イメージがすっかり頭の中に出来上がっている。大きな大会に出場するのは、「彼女と一緒に花火大会に出かける」と同じようなワクワクする体験なのです。

西川 (笑)。そうした考え方がうらやましいです。私は本番では緊張してしまうタイプなので。ただ、私も「打つ」イメージトレーニングはいつもの練習に取り入れています。例えば、スイング練習にしても神宮球場の光景を思い浮かべながらバットを振っています。3月の侍ジャパンの欧州代表戦に出場したときは、ふだんテレビで観ているプロ選手に囲まれてベンチでガチガチになっていましたが、代走からセンターの守備に入って、フェンスに激突しながら強い打球をキャッチしたことで一気に緊張がほぐれ、その後に回ってきた打席でタイムリーヒットを打つことができました。アスリートにとって、メンタルは本当に大切なのだと痛感した体験です。

「侍ジャパンシリーズ2024」欧州代表との試合で(3月7日)。7回裏欧州無死、センターへの低いライナーを西川選手はダイビングキャッチし、スタジアムを沸かせた

太田 競技以外の話をしても良いですか? 私は大学生活最後の1年間、できるだけ「遊びたい」とも思っています。原監督の下で競技そのものだけではなく、組織づくりについても考える面白さを知ったことから、いつかアスリートを引退した後の将来は経営者を目指したい。そのためにも今のうちからさまざまな体験をして、社会について見聞を広げたいのです。その点でも青学に入学して良かったと思っています。原監督という優れた“経営者”を間近で見ることができましたし、他にもさまざまな経営者やメディア関係者、そして各分野で活躍する青学のOB・OGの方々と出会えたことが、自分の大きな財産となっています。でも、まず目指すべきはオリンピックのマラソン日本代表に選ばれて出場することです。

西川 青学に入学して良かったと思うのは、私も同じです。自分が納得できる野球ができたのも、選手の自主性を尊重してくれる青学硬式野球部の環境があったからです。プロへの道も、青学チームの一員として東都一部リーグでの熾烈な戦いを通して見えてきました。もう一つ付け加えると、仲間たちと過ごす寮生活も、実家を離れて青学に来た私にとっては楽しい経験でした。

太田 大学生だからこそできることはまだたくさんありそうなので、お互い悔いのない1年を過ごしましょう!

西川 もちろん!

学長
(社会情報学部 社会情報学科 教授)
稲積 宏誠

青学スポーツ「強さ」の根源

青山学院大学では「AOYAMA SPORTS VISION」を定めています。これは体育学部のない本学でのスポーツ振興における人材育成の基本理念であり、下記の3本柱で構成されています。

①高い水準の知力・体力・精神力・競技力を併せ持ち、学問の場におけるスポーツ実践の意味や価値を自覚する「AOYAMA Academic Athletes (AAA)」の育成
②健康で豊かな暮らしに連なる「生涯スポーツ」の起点となる日常的なスポーツライフの創出によるスポーツマインドの涵養
③リーダーシップやスポーツマンシップ、ボランティア精神、ホスピタリティーなど多様な能力に優れ、地域社会や国際社会に貢献する「サーバント・リーダー」の輩出

また、スポーツ振興のもう一つの柱であるスポーツによる社会貢献としては、「Communicate Activator with Sports(CAS)プロジェクト」など学内のスポーツ資源を生かした地域振興の取り組みを進めています。このプロジェクトでは、信頼されるスポーツ指導者育成と通して現在課題となっている運動部活動地域移行の指針となることも目指しています。たとえば、陸上競技部(長距離ブロック)が実践しているトレーニングと、フィットネスセンターがアスリートに対して行う指導を融合させた本学オリジナルの運動メソッド「青学コンディショニング」を、地域の小中学生などにも開放しています。

青学スポーツの「強さ」はこうした人材育成と社会貢献を視野に入れたスポーツ振興の理念に支えられています。今後も、この理念を浸透させていくための取組みを続けていきますので、学内外の多くの方々の応援をお願い申し上げます。

2023年度 学生表彰・学友会表彰

「学友会表彰(青山連合会表彰・相模原連合会表彰・体育会表彰)」では学友会活動において、特に顕著な活動成果を挙げた会員および所属部会を表彰しており、22団体、123人が受賞しました。

「学生表彰」では学業および学友会活動以外の多様な分野において、人の範となる活躍または業績をあげ、その行為が本人および青山学院大学の栄誉となるものについて表彰しており、8人の学生が受賞しました。